2024年12月24日( 火 )

韓国経済ウォッチ~崖っぷちに立たされた韓国海運業界(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 世界的な海運会社は、このようなコスト削減の努力だけでなく、金融危機後に不況で船舶の価格が安くなったときに船舶を大挙して調達し、競争力を育てた。船舶の数だけを比較してみると、韓進海運は99隻、現代商船は55隻、スイスのMSCは488隻を持っている。韓国の大手海運会社は、不況に喘いで持っていた大型船舶を売却したのに対し、むしろ世界の大手は逆の行動に出た結果である。

zousen その結果、今は用船料の高さが韓国の海運会社の経営を直撃しているため、戦略の差は克明である。不況だけが原因ではなく、未熟な戦略も原因である指摘がうなずける。海運業はただの運送業ではなく、国家の基幹産業であるという認識のうえで政策が必要だが、その認識の欠如で、これまで築いてきたインフラが崩壊しそうになっている。
 海運産業は貿易を支える大事なインフラであるだけに、今回の大手海運会社の構造調整に失敗すると、韓国輸出産業に与えるダメージは大きく、損失額は約20兆ウォン~30兆ウォンに上るという試算さえある。挙句の果てに、韓国の輸出企業は中国もしくは日本の海運会社に頼らざるを得ない最悪の事態になりかねないと、海運業界では警鐘を鳴らしている。

 それでは、2つの海運会社をめぐって、どのような動きがあるのかを見てみよう。

 最近、韓国では海運だけでなく、鉄鋼、石油化学、建設、造船の競争力が弱くなって、大きな問題に直面している。今までは韓国経済を牽引していた産業であるが、経済環境の急激な変化によって、状況が一変している。政府レベルで構造調整をしないと、もっと事態は深刻化するという意見が支配的である。
 大手海運会社の経営不振は深刻で、韓進海運の負債金額は5兆6,000億ウォンで、現代商船の負債金額は4兆8,000億ウォン、2社合計の負債額は10兆ウォン規模にもなる。韓進海運の負債比率は752%で、現代商船の負債比率は878%で、基準値である負債比率200%の4倍にも達している。
 2社とも、まずは債権団と経営再建に向けての協議を開始している。この協議が成功するかどうかのポイントは、用船料の交渉である。経営不振で船舶を売却しまった結果、今では国際相場の最大5倍の価格で、貨物船の長期リース契約を結んでいるようだ。経営悪化を防ぐには、この交渉が急務である。現代商船はオーナーが経営権を放棄するなり、会社を何とか更正させるために積極的だし、用船料の交渉も進んでいるようだ。

 もう一方の韓進海運の方は、交渉は今入ったばかりで、状況が予測できない。考えられるシナリオは3つくらいあるが、そのなかでも1社は用船料の交渉に成功し、もう1社は失敗し、成功した会社が失敗した会社を合併するかたちになる可能性が高いのではないかと、筆者は個人的に予測している。

 造船、鉄鋼などの不況で大変ななかで、海運業の構造調整は、関連産業に与える影響も大きいだろう。海運会社を救い出すために、ある程度の税金が投入される必要があるが、税金の投入が本当に有効かどうかは、他の産業の将来性などと比較して慎重に決定を下すべきであろう。

(了)

 
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