2024年11月26日( 火 )

COMPUTEX 2016 ~日本とアジアを結ぶ架け橋・沖縄(前)

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沖縄県商工労働部情報産業振興課長 盛田光尚氏

 台北で「COMPUTEX Taipei 2016」が5月31日から6月4日の5日間にわたり開催された。今年で36回を数え、同ICT(Information and Communication Technology)国際見本市は中華民国対外貿易発展協会(TAITRA)と台北市コンピュータ同業協会(TCA)の共催で行われ、アジア最大規模を誇る。近年、県単位で展示ブースを構える沖縄県、来台中の商工労働部情報産業振興課の盛田光尚課長に聞いた。聞き手は沖縄・公立大学法人 名桜大学 清水則之名誉教授である。

 ――過密スケジュールの中、お時間を頂きありがとうございます。本日は沖縄県と台湾との経済交流に関して色々とお聞きしたいと思います。では、清水先生、進行の方よろしくお願い致します。

子供のころから、とても近く、親しみのある存在

 清水則之氏(以下、清水) お久しぶりです。名桜大学の清水です。先ずは、盛田課長と台湾との関係について教えて頂けますか

 盛田光尚氏(以下、盛田) 個人的な感想になりますが、私にとって台湾は子供のころから、とても近く親しみのある存在でした。父がよく台湾を旅行してお土産を買って来てくれました。また、沖縄の父の友人が台湾の友人と交流があり、台湾の代表的な歌「雨夜花」などは私も良く耳にし、口ずさんだこともあります。お土産では、今は同じものはないみたいですが、「豚肉を乾燥させた食品」などが、とても美味しかったと記憶しています。

 もともと沖縄と台湾は地理的近接性もあることから、日本政府を超えて経済交流が盛んでした。沖縄県庁も日本政府より一段上の行政的なつながりもありました。日中国交正常化以降、日本政府は台湾と断交の状態となりましたが、沖縄にとって、台湾は昔も今も近い、親しい存在と思っています。

 私は個人的にPTA役員の経験があります。当時は、沖縄と台湾の学校、特に中学校レベルでは、沖縄の子供たちが台湾に行き、台湾の子供たちとの国際交流がとても盛んでした。

国を挙げて、取り組んでいる姿勢を強く感じます

清水名桜大名誉教授(左)と盛田課長<

清水名桜大名誉教授(左)と盛田課長

 清水 沖縄にとって、台湾は歴史的や地理的にはもちろん、心理的にも近い存在ですね。さて、そんな台湾で開催された、COMPUTEXの今年の感想は如何でしょうか。

 盛田 今回の訪台は過密スケジュールのため、(盛田課長は前日の夜便で来台、取材日の夕方便で帰国された)充分に会場を視察できているとは言えません。しかし、私は過去3回、COMPUTEXに参加しています。その経験を踏まえて申し上げれば、今回もそうですが、どの会場に行っても凄い人だかりに驚いています。沖縄県としては、東京ビッグサイト、横浜パシフィコなど、日本国内のICT関連の展示会にも出展しています。比較しますと、外国からのバイヤーが多いせいかも知れませんが、より高い積極性を感じます。

 COMPUTEXは、開幕式には毎年総統が出席するなど、国を挙げて取り組まれていることにすごく感銘を受けました。会期中は「ビジターバッジ」で地下鉄は乗り放題で、会場間の移動や空港、一部のホテルまでは無料シャトルバスが運行されています。その他、観光情報サービスからイスラム教礼拝室まで、かなりきめ細かなホスピタリティが整っていると感じます。

台湾は沖縄県にとって極めて重要な国の1つです

 清水 そろそろ、沖縄県と台湾との経済交流の話題に入っていきたいと思います。先ず、現在の沖縄と台湾は、経済的にどのような関係になっているか、教えて頂けますか。

 盛田 台湾は観光や貿易などの面で、沖縄県にとって極めて重要な国の1つです。2015年の統計で、沖縄の外国客は、大幅に増えて167万300人(対前年度比69.4%)で過去最高になりました。この原因は、昨年度は、全体として円安傾向にあったことに伴い、訪日旅行需要が高かったことに加え、重点市場(台湾、韓国、中国、香港)において新規就航及び既存路線の増便があり、空路客も増加したからです。また、クルーズ船の例年より長い運航期間と寄港回数増により、海路客も大幅に増加しました。

 国籍別の外国人客では、台湾が第1位です。台湾‐那覇路線の増便やLCCの新規就航に加え、クルーズ船寄港回数の増加により、空路・海路客とも増加、過去最高を更新して初の50万人台となりました。第2位は中国本土で、第3位は韓国です。しかし、ともに30万人台ですので、両国とも増加傾向にありますが、第1位の台湾とは、約20万人の開きがあります。

 一方、貿易の輸出動向では、台湾は沖縄にとって、韓国(約117億円)、中国本土(約99億円)に続いて、第3位(約83億円)になっています。さらに、近年は沖縄経済界と台湾経済界の連携は加速しています。この3年間の大きなものだけを見ても、(1)沖縄工業連合会と台日商務交流協進会 MOU締結(2016年6月)(2)那覇港管理組合と台湾港務 パートナーシップ港 覚書(2015年4月)(3)沖縄県産業振興公社と財団法人資訊工業策進会 MOU締結(2014年2月)などがあります。

(つづく)
【文・構成:金木 亮憲】

※MOU:Memorandum of Understandingの略称。行政機関等の組織間の合意事項を記した文書であり、通常、法的拘束力を有さないと言われる。

<プロフィール>
morita_pr盛田 光尚氏(もりた・みつなお)
沖縄県商工労働部情報産業振興課長
沖縄県出身。1985年沖縄県庁入庁。沖縄県土木建築部、観光リゾート局、知事公室、商工労働部企業誘致主幹を経て東京事務所勤務。その後、商工労働部情報産業振興課基盤整備班長、東京事務所企業誘致対策監を歴任し、2016年4月より現職。

 
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