2024年11月27日( 水 )

小倉・魚町銀天街から始まるリノベーション活動(3)

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小倉中心部の新機軸提案

 2010年に小倉地区中心市街地活性化協議会のタウン・マネージャー業務を推進していた筆者は、前回紹介した「魚町サンロード・カルチェラタン構想」にも関連して、停滞する小倉中心部への新機軸を考えていました。
 それは、(1)(小倉魚町銀天街に隣接する)サンロード商店街の若者拠点化、さらにはアート村構想であり、そこから当時計画されていた小倉駅新幹線口の北九州市漫画ミュージアムおよび関連施設であるサブカルタウン「あるあるシティ」との連携、(2)北九州市立大学の学生活動拠点北九大魚町ラボに配置した統計データベースを活用した魚町銀天街データベースマーケティング拠点化、(3)各地の農水産物直売所の集積による都市と地域との交流拠点化、(4)旦過市場の観光拠点化、(5)ギラヴァンツ北九州と商店街の連携、またはソフトバンクホークスとの連携強化による商店街スポーツ交流拠点化、(6)商店街の中の空きビルとなっている巨大施設を活用した観光拠点化、(7)以上を統括してまち全体を全国に訴求できるポップカルチャー拠点化、といったものでした。

小倉家守構想

 そういった状況下、北九州市は「小倉中心市街地ビジネス地区周辺における家守方式による都市型ビジネス振興によるまちなか再生事業」(小倉家守構想)を開始します。
 この事業は「小倉中心市街地の事業所数と就業人口の増加を目的に、都市型ビジネス振興を図る観点から民間活力を活用した起業家向けオフィスへの入居支援や、多種多様な街づくり活動団体等と連携しながら魅力ある街なかコミュニティの形成などを推進する」(同事業資料による)もので、これまで小倉中心市街地の活性化策は主に、ハードによる都市拠点整備や商業振興施策が中心であったため、急増する空きオフィス・空きビルの対策が急務であるとされ、ビジネス地区の立て直しが急がれていたのです。
 実際、筆者が小倉中心部に通うようになって驚いたことは、小倉駅前の一等地のオフィスビルに空きフロアがたくさんあること、オフィスビルが立ち並ぶ小文字通りのビルが夜には真っ暗な状態になることでした。
 そこで、北九州市は東京神田における家守事業で実績のあるアフタヌーンソサエティ代表の清水義次氏を起用し先の事業に着手したわけです。
 「家守」とは、江戸時代に土地と家屋を持っている不在地主に代わって、その管理人をする大家(家守)のことです。家守は、長屋の管理だけではなく、町内の世話役・まとめ役も担っていました。まさに、現代でいうタウン・マネージャーそのものであったのです。
「小倉家守構想」では、地元のまちづくり関係者と学識経験者を委員に据えて北九州市の関係部局の担当者も交えて議論を重ねました。
 まちづくり関係委員のなかには、後程登場する梯輝元氏(タウンマネジメント魚町代表取締役)や地元不動産会社代表、そして当時の小倉地区タウン・マネージャーである筆者も名前を連ねています。学識経験者は、地元大学の都市計画や建築関係の先生方です。

アーケード撤去後の現在のサンロード商店街<

アーケード撤去後の現在のサンロード商店街

 委員会は4回開催され、都市空間のあり方と産業集積の関連性を探るために実のある議論が交わされました。具体的には、北部九州における小倉のポジショニング、小倉の真の課題は何か、中心市街地活性化でいわれるコンパクトシティ化のあり方、雇用機会の創出のあり方、育成・誘致すべき産業クラスター(中心市街地居住、健康、先端技術、芸術・文化、教育、環境科学、情報技術、金融等)のイメージ、エリアごとの戦略産業クラスター、そして、リーディングプロジェクトの具体案の立案、それに関連する都市型産業振興施策の検討といったところでした。なかなか興味はあるが、一筋縄では行かない難しいテーマを与えられたものです。
 この4回にわたる議論の過程を議事録により今読み返してみると、筆者は、例えば「ツイッターをやっていると、北九州にデザイナー、IT関係、保険代理店など個人でやっている人が多くいる。できれば、こういった人をまちなかに引っ張ってきたい。例えば、デザイナーとかをサンロードの(ビルの)2階あたりにブースを作って、低家賃で入れると人が集まってくる」といった発言やサンロード商店街の若者拠点化という発言を盛んにしているのです。
 まさに、これから詳しくお話するリノベーション活動の先駆けともなることを当時から言っていたのです。

(つづく)

<プロフィール>
100609_yoshidaM&R 地域マーケティング研究所
代表:吉田 潔
和歌山大学国際観光学研究センター客員研究員、西日本工業大学客員教授、福岡大学商学部非常勤講師

 
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