2024年12月19日( 木 )

部材や鉄筋量を減らす耐力偽装!?警告した元・一級建築士に聞く(後)

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 ――耐震強度は、どのくらい不足するのですか。

 仲盛 偽装して出された結果を、基準に忠実に計算して、耐震強度に換算すると、10~35%の強度が不足する状態だと考えられます。

 ――どのくらいの規模の広がりを持つと考えていますか。

kensetu3 仲盛 偽装行為に手を染めた構造設計者は、2006年以前の鉄筋コンクリ―ト造(RC造)建物の構造設計経験者の8割程度にのぼると思われます。ですから、06年以前の公共建築物、民間建築物のRC造と鉄骨鉄筋コンクリ―ト造建物の少なく見積もっても4割、普通に考えれば7割は、強度不足に陥っていると考えるのが自然でしょう。私が代表をしていた設計事務所では、設計の実務は原則として社員が行っていたので、現時点では詳しいことはまったく把握していませんが、おそらく警告書で指摘したようなことが行われていたことも考えられます。今後検証できる物件については、可能な限り検証を行っていきたいと思います。

 ――これまで、行政も含む建設業界から、誰も問題を明らかにしなかったのはなぜですか。

 仲盛 現役の構造設計者は、意匠設計事務所やゼネコン・工務店などとの上下関係のなかで仕事をしており、持ちつ持たれつの関係にあり、そのなかで、意匠設計者やゼネコンなどの要求に沿わない不都合な結果を回避するために、自ら構造計算書を意図的に操作してきたので、公にすれば仕事の道が絶たれるからです。

 ――今回、建築業界ぐるみとも言える「耐力偽装」を公にしたきっかけは?

 仲盛 1つは、熊本地震を契機に、大地震に対する国民の恐怖が高まっていることです。福岡県は、地域係数が0.8と、そもそも20%も耐力が低いうえ、今回告発した耐力偽装が重なれば、熊本以上の大きな被害が予想されます。適切な構造検証、耐震補強、耐力補強を速やかに行うべきだと思い、告発する必要に駆られたことです。
 もう1つは、久留米市で鹿島建設が元請施工した新生マンション花畑西で、設計の偽装と施工の不具合が重なって耐震強度が著しく不足していることが判明し、裁判中の事件で、建築確認済証を交付した久留米市、設計者、鹿島建設が責任逃れに終始しているのをみて、危険な状態に置かれている多くの建物を一刻も早く補強し、安全性を確保し、建築業界が国民の信頼を取り戻さなければいけないと感じたからです。
 強度不足の建物は、速やかな補強が必要なだけではなく、担保価値の下落などの問題で、金融機関への影響も懸念されますので、官民、業界を挙げて、一日も早く対策を講じていただきたいと願っています。

(了)
【山本 弘之】

▼関連リンク
・耐力偽装、建築界に蔓延か?部材や鉄筋量を減らす操作~元・一級建築士からの警告​

 
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