周波数オークションはなぜ導入されないのか?(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
「周波数オークション」は、参加する企業間の競争を促進し、ビジネスを活性化させる意味だけでなく、政府にとっても、別の大きなメリットがある。入札制にすることで、政府にも大きな収入が確保できるからだ。アメリカでは、電波利用料収入は240億円であるのに対して、周波数オークションの収入は4,500億円(2015年)に上っている。さらにアメリカでは、放送局の免許もオークションの対象になっている。
一方、日本では電波利用料収入は715億円(12年)であるのに対して、周波数オークションの収入は当然だが、ゼロである。周波数オークションを導入することで、市場に市場原理を導入し、今後、発展が予想される通信分野でのビジネスを活性化させるだけでなく、大きな財源を確保できるという二二重の効果があることがわかる。ある分析では、周波数オークションをすれば、日本では合計3兆円以上の収益が期待できるという推計すらある。
それでは、なぜ日本では周波数オークションの導入に消極的なのだろうか――。
日本では、新聞社がテレビ局を支配しているという独特な構造となっているが、まず既得権者であるテレビ局の反発と、NTTを中心とする通信キャリアの反対があることが考えられる。業界の大勢が反対すると、監督官庁としては利権も絡んでいるため、消極的にならざるを得ない。今のテレビ局などは、周波数オークションが導入されることによって、コストが上昇したり、新規参入者が入って競争が激化することを恐れている。すなわち、今のように競争のない寡占状態で、暴利をむさぼれることがいいのだ。
放送局を例にすると、電波利用料として支払った金額の合計は42億5,000万円ほどであった。それに比べ、放送局の営業利益の合計は約3兆円に上る。この制度の下で、どれだけ放送局がぼろ儲けをしているのかがよくわかる。
それだけではない。12年の715億円の電波利用料の内訳を見ると、携帯電話キャリアが電波利用料の72.3%を占め、放送局の電波利用用の割合は7.2%に過ぎない。放送局は電波利用料の10分の1しか負担せず、10倍の電波利用料を、携帯電話を利用するユーザが負担しているわけである。
現在の状況は、業者や官僚にとっては都合が良いかもしれないが、国民と政府にとっては大きな損害を被っていることになる。このような事実を、既得権者であるマスコミはあまり世間に知られたくないため、極力報道もしようとしない。
その結果、周波数オークションについては、一般国民はあまり知らないし、その必要性も痛感していないのが現実ではなかろうか。ただ、周波数オークションは利点ばかりかと言うと、そうでもない。通信サービスは莫大な設備投資が必要なだけに、サービスをする企業には、安定した財務力が要求される。新規参入する会社が途中でサービスを継続できず、撤退してしまうリスクは存在する。
このようなリスクを理由に挙げ、既存の会社は周波数オークションの導入を反対したり、国民を脅かしたりする。周波数帯域を確保することは、通話品質の確保やダウンロードスピードのアップなどには欠かせない。ところが、周波数オークションに参加することは、大きなコストが発生することを意味する。将来のためには必要な投資ではあるが、短期的には財政的な負担になるのは間違いない。しかし、資源を有効活用するためには、周波数オークションの導入は避けて通れない。
(了)
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