2024年11月26日( 火 )

原油安がもたらす世界経済への影響(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 原油価格は、リーマン・ショック前までは140ドルに達するなど急騰していたが、リーマン・ショック後は急激に下落。一時期ではあるが、30ドルを割り込む時期もあった。
 今年の8月15日のWTI原油先物価格は、1ドル45ドルを突破し、原油価格は少し値を戻している。

 それでは、なぜ原油安が続き、産油国では原油安によって、どのような状況に置かれているのかを見てみよう。

 原油価格の下落が続けば、OPECは従来なら価格を維持するため、減産を決定する。しかし、現在のOPECは価格をコントロールできる力を失っている。かつてのOPECは、原油の価格決定権を持っていて、世界経済に絶大な影響力を誇示していた。

office12-min OPECは1960年9月に産油国が中心になってできた組織で、原油価格を調整し、産油国の利益の最大化を図った。OPECは73年に第1次中東戦争が勃発すると、当時1バレル3ドル程度だった原油価格を一気に12ドルに引き上げたり、その後の第2次中東戦争後も、原油価格をさらに3倍に値上げしたりして、石油危機を引き起こした。

 OPECの現在の加入国は13カ国で、通常なら原油価格が下落すると、減産に合意し、価格下落に歯止めをかける。 しかし、今のOPECは過去とは違い内部分裂が勃発し、自国の利益だけを最優先するようになっている。そのため、結果的には自国だけでなく、相手にも不利になるような「囚人のジレンマ」に陥っている。

 たとえばサウジアラビアは、米国のシェールオイルへの対応策として、減産ではシェアを奪われるだけなので、今の生産量を維持する必要があると主張する。サウジアラビアの主張に賛同する国はいうと、比較的に財政が安定しているクウェート、カタール、UAEなどがある。
 一方、ベネズエラのような財政状況が悪い国は、減産して価格を上昇させるべきだと主張している。さらにイランの場合は、今まで制裁を受けていたので、増産をするのは当たり前で、減産など考えていない。イランは、2012年には370万バレルを生産していたが、制裁を受けることによって、生産量は270万バレルにまで落ち込んだ。イランは16年の制裁解除と共に、西欧の国から資本を取り入れて、5年後には500万バレルの生産を計画している。
 ロシアも原油価格が下落することによって、深刻な財政難に直面している。ロシアは財政収入の半分以上を原油収入に依存している国で、できることなら少しでも増産して、収益を確保しようとしている。ロシアは財政難を解決するために一方では歳出カットを実施し、一方では原油を増産し続けている。また一方で、ロシアはアジアでの原油販売をめぐって、サウジアラビアと熾烈な戦いを繰り広げている。

 このようにOPECの会員はそれぞれの立場によって分かれていて、原油価格の調整機能が働いていない。9月にアルジェリアでOPECの臨時開合が予定されているが、この会合の行方が注目される。

(つづく)

 
(後)

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