改装によって心機一転、より良質な演劇を市民に提供(後)
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(株)博多座
より躍動的な劇場として再稼働
16年2月後半から3月末まで、博多座は1カ月余りの休館に入った。博多座は西日本随一のオールラウンド演劇で、オーケストラボックスがあるのが特長。その自慢の設備や機材等のメンテナンス、内部の売店やレストランなどの改装が目的だ。休館の間、興行収入は途絶えたが、芦塚社長は15年度の収入実績は安定しているとし、さらに「4月からの興行でも収益を見込めるため、収益面での心配はしていません」と語る。自信の根拠となるのが、創業以来の17年間の興行成績がすべて収められた資料だ。「我々、博多座の経営幹部は、常にこの数字を持ち歩いています。これを見れば、どのような演目を、何週間興行すべきか、また新たにどのような演目を求めるべきか、我々が何を採択すべきかは、だいたいわかるものです」と芦塚社長。この資料と市場動向をもとに、所定の集客力と収益性が期待できる演目を選定および制作してきた。データから短期間の方が収益を上げられると判断した演目については、興行日数を調整することもしばしばあった。
休館が開けた4月、最初の演目は市川猿之助丈率いるスーパー歌舞伎「ワンピース」。国際的にヒットしている漫画「ワンピース」の支持層は幅広く、観客層は子どもから高齢者にまでおよぶ。チケットも2月時点で完売が予想されたという。改装後の幕開けにふさわしいパンチの利いた演目だ。4月以降もすでに計画で埋まっており、新たな企画も見受けられる。概ね企画に若々しさが感じられるのは、確固たる業績データと市場動向調査を幹部クラスで熱心に行った結果であろう。博多座の顔でありながら演目によっては集客が難しい歌舞伎も、この6月は期待できそうだ。収益が安定している宝塚歌劇については、トップスターが佐賀県出身ということで、佐賀県からの応援も確約済みだ。その他、大型ミュージカルなどで大黒柱をしっかり立てているが今年は何かが足りない。あの若い世代の支持率の高い「Endless SHOCK」がないのだ。今年は事情により興行できないそうなのだが、芦塚社長に動じた様子はない。「変わる手は考えてあります」と一言。高収益の演目が興行できないことは一見ピンチに思えるが、これを新たな企画にチャレンジするチャンスとして見ている感がある。
博多座の企業理念のなかには「地域文化の発展及び発信基地をめざし、国際化に貢献する」という一文が記されている。今やインバウンド効果抜きに語れない福岡経済下にあって、改装を海外へのスプリングボードと見る目もあるかもしれない。だが、周囲にせかされて矢を放つのは本意ではなかろう。企業理念に記された文言は他にもある。「良質な演劇を上演し、お客様へ満足を与えること」、それによって「心豊かな生活と潤いのある社会の実現に貢献すること」などを丁寧に実現化させ、売上拡大と利益の向上を目指す。そして「最大限の成果を挙げるために常に最高の方法を追究していく」のが、博多座らしい歩み方と言えよう。
(了)
<COMPANY INFORMATION>
代 表:芦塚 日出美
所在地:福岡市博多区下川端町2-1
設 立:1996年7月
資本金:11億2,500万円
TEL:092-263-5874
URL:http://www.hakataza.co.jp<プロフィール>
芦塚 日出美
1939年長崎県生まれ。九州電力(株)副社長、九州通信ネットワーク(株)社長から2010年6月、(株)博多座4代目社長に就任。福岡商工会議所の情報・文化・サービス部会の部会長などを兼務。関連キーワード
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