2024年11月26日( 火 )

ますます高まる朴大統領への退陣要求(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 韓国の国民は、現在暗澹たる心境である。デモのピケットを見ると、「これだと、国家と言えない」という自嘲気味の表現すら登場している。朴大統領の顔すら見たくないという国民もいる。要するに、国民の怒りは頂点に達している。外から見れば、自分で選んだ国民が、大統領を否定している韓国人の行動が腑に落ちないだろう。それからこのような行動は憲法の秩序をないがしろにすることにもなりかねないので、いかがなものかと映ることもあるだろう。理性を乗り越えて、今回の事態は、韓国人の情緒としては許せないことである。法律の枠内で丸く収まる方法があればベストであるが、4年近く朴大統領の治世を経験してきた国民としては、如何に朴大統領が一方的な人物であるかをよく知っている。

sora 今回のスキャンダルで、今までの噂がどんどん解明され、否定されていた巷の噂が事実であることが明らかになりつつある。世間で一番注目しているのは、修学旅行中の学生を含め295名の死者と、9名が行方不明になったセウォル沈没事故の真相が未だに究明されずにいたことである。今回のスキャンダルの中心人物の崔順実容疑者は、空白の7時間の朴大統領の密会のお相手ではないかと噂されていた人物の元妻である。
 セウォル号沈没を巡っては数々の噂があったが、その7時間について、大統領府は明確な回答をしていない。韓国最大の海難事件で、この件で朴大統領は信頼に傷が付いていたが、今回のスキャンダルは、それに拍車をかけた形で、止めの一撃になると思う。
 韓国の大統領は権力が集中していて、一旦大統領になれば、よほどのことがない限り起訴されたりしない。その法律が今回のスキャンダルの解決も難しくしている。
 ところが、朴大統領は国民の意思とは関係なく、辞職する考えがないことは明らかだ。
 今辞職すれば、側近などを守れなくなるので、大変でも居座って事態の収拾を図ろうとすることだろう。

 一方与野党は、弾劾を進めようとしている。12月2日を目処に、弾劾を決議しようとしている。国会で国会議員の3分2の賛成で弾劾は決定する。与党にも非主流派は弾劾を主張しているが、その人数は40人ほどである。その中で29人が造反すれば、国会での弾劾は成立する。問題は憲法裁判所でも3分の2の賛成が必要になる。
 しかし、憲法裁判所は保守系の人がほとんどなので、3分の2をとるのは簡単ではない。成功したとしても、審議に6カ月ほど時間がかかるため、ほぼ任期を終える時期に弾劾が決定する。大統領府ではこの方法を好むかもしれない。
 政治家としては、大統領が今辞職すれば6カ月以内に選挙になるので、準備する時間もない。それで弾劾を主張するしかない。

 一方国民はというと、次々と出てくる疑惑に呆れて、1日でも早く朴大統領の大統領職を辞めさせたいという気持ちである。混乱があっても、朴大統領を早期に辞めさて、代わりに権限代行の首相を任命して、残余任期は首相に任せばいいと思っている。家計負債の問題、造船業と海運の構造調整問題、輸出の低迷など、対応を間違えば、韓国経済が危機に直面するような大事な時期である。大統領の賢明なる決断と国民の知恵が要求される時期である。

(了)

 
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