朴大統領弾劾後の政局の行方(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
弾劾後の国民の要望は、憲法裁判所の審理を待つまでもなく、朴大統領が辞職することを望んでいる。とくに、朴大統領の弾劾可決で政局の主導権を握るようになった「共に民主党」の 文在寅(ムン・ジェイン)前代表は、朴大統領の即刻退陣を求めて闘争をすると宣言した状態である。極右である民主労総を中心に、「共に民主党」、それから国民の大多数は、朴大統領が早期辞職することを求めている。
韓国の国民は過去に政治の腐敗に抵抗して、国民の意思を貫徹させた成功経験を持っていて、法律よりも国民の情緒を優先させる側面が少なからずある。
1960年、長期執権で政権が腐敗したときに4月革命を起こし、大規模なデモで李承晩(イ・スンマン)大統領を倒し、国外に追放したことがあるし、87年には学生民主化運動で70万人がデモに参加し、その結果、当時の独裁政権であった全斗換大統領から大統領直接選挙を勝ち取ったこともある。そのような事例があって、デモによる目的達成を願ったりする。
しかし問題は、早期辞職を求めている野党も国民も、具体的な代案を用意しているわけではない。それにも関わらず、抗議集会を続け、憲法裁判所の早期判決を導き出そうという雰囲気になっている。
ところが、朴大統領を支持している保守勢力との衝突、それから、デモが過激化する可能性もかなりあり、それが懸念されている。国のために、1日でも早く朴大統領が決断するのが望ましいが、今のところそのような可能性は相当低いと言わざるを得ない。では、政界はどうだろうか。
まず、弾劾が可決されることによって、今まで力が弱かった非朴派にも光が差したことは間違いない。親朴派のなかにも一連の流れで、これ以上与党と同調することは自分の政治生命に重大な危機をもたらす可能性があることに気づいた議員が出た。非朴派ではこれを機に、党を解散して新しく新党をつくろうという案を提案しているが、この提案に親朴派は乗り気でない。どのような状況になるかわからないが、与党が政局を転換させるために、改憲カードを切り出す可能性は高い。すでにセヌリ党の金武星(キム・ムソン)議員を中心に親朴、非朴など 40名の議員が、改憲に賛同している。
韓国の大統領の任期は5年1回きりで再選はできないが、今の制度は問題があるので、改憲をしようということである。大統領の任期が1回きりなので、経験が蓄積できず、慣れたら辞めることになることが問題だし、大統領に権限があまりにも集中していて今回のようなことが発生するので、大統領の権限を縮小しようということである。改憲論は、政界では幅広く共感を得ており、改憲論を核にして政界再編が起こる可能性もある。ところが、今の状況を維持したまま大統領選挙に臨みたい文在寅(ムン・ジェイン)前代表は、改憲に反対している。
ただ、国民は改憲よりは朴大統領の辞職が先で、改憲に何か隠された意図があるのではないかと警戒をしている。検察は、朴大統領は今回の国政介入疑惑の共犯であると発表している。また、特別検察の捜査が進めば、いろいろなことが明らかになるだろう。しかし、事実究明と国益、どちらを選ぶのかの選択に迫られている。
今後、特別検察の捜査で、もっとショッキングな事実が出てくるかもしれない。今、国民は怒り心頭で、どんな反対証拠が出てきても、今後、朴大統領の信頼を回復するのは難しいと思われる。最近は誰に会っても、朴大統領を擁護するような発言はあまり聞かれない。日本の一部の報道では、デモは極右勢力云々という指摘もあるが、今回のデモはそれとも性質が違う。予断はできないが、事実が発表されるたびに政局は揺れるかもしれない。しかし明確なのは、今後、次期大統領選挙に向けて改憲論をはじめ、いろいろな動きが本格化する。どんな場合にしても、十分な準備には時間が不足している。慎重に大統領を選ぶことで、今回のような不幸がないことを願いたい。
(了)
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