2024年12月22日( 日 )

不透明な屋台公募、営業継続を求めて訴訟へ~「天新」「かじしか」大将が会見

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 審査における不正が発覚して問題となった福岡市の屋台公募。市は、審査における公平・公正を理由として、選定委員会や審査基準に非公開の部分(闇)を多くつくった。結果的に、その闇が“不正の温床”となった。一方で、公平・公正の維持のために透明性を高めるという考え方もあり、入札やプロポーザルで審査基準を明らかにしている自治体も少なくはない。なぜ、不透明なプロセスで行わなければならなかったのか。屋台公募は、その目的に強い疑念を抱かれるに至った。

味は見ない!屋台を知らない? 疑問だらけの公募・選定

屋台「天新」の佐藤雅三さん

 今回の屋台公募の第一次審査で落選した、現在営業中の屋台営業者とその弁護団が16日、福岡市内で記者会見を開き、市に営業の継続を求める訴訟を3月末までに提訴する考えを示した。現在営業中の屋台営業者は、元々の営業許可者から権利を譲り受けるなどした「名義貸し」と見なされており、2013年9月1日施行の福岡市屋台基本条例で、今年3月31日の許可取り消しが決められた。今回の公募では、「名義貸し」とされる28軒の屋台のうち25軒が応募。書類のみによる第1次審査で約半数が落選した。

 高島宗一郎福岡市長が「観光資源」と言い切った屋台。客同士が肩をすり合わせて歓談する雰囲気、大将の人柄、風情など、屋台が支持を受ける理由はさまざまだが、決して外せないのは、やはり味。人気屋台が料理の味も確かめられないペーパーテストで落とされたという結果に、多くの屋台ファンが“素朴な疑問”を抱いている。「それで何がわかるのか。高島市長(福岡市)は一体、何がしたいのか」と。

 味が審査対象外ということについて、選定委員の1人は、「短期間(1~2日)で審査するには仕方がない」と居直る。屋台営業で生計を立てる人たちの人生を左右する重要な選定だ。高島市長のいう「観光資源」を守る(創る)という意味でも、本来は、もっと時間をかけてやるべきではないのか。また、公募における最終決定は選定委員会で行われるが、その委員の人選は市が行い、委員の任命は市長が行う。ある委員は取材に対し、「ぼったくり被害に遭って以来、屋台には二十数年間、行ったことがない。なぜ、私が委員に選ばれたのか」とボヤく。人選も甚だ疑問だ。

 

選ばれても強制移動!募集で消された祇園地区の営業場所

屋台「かじしか」の下村和代さん

 今回の記者会見で、屋台「天新」の大将・佐藤雅三さんは、「公募自体には反対ではなかったが、募集する観光エリアに自分の屋台がある場所が含まれていなかった。そのことについて福岡市の説明がない」と語った。「天新」を含む3軒の屋台が営業する祇園地区は、今回の募集エリアに含まれていない。つまり、「天新」は今回の公募で選ばれても、現在の場所から移動しなければならなかった。

 ほかの屋台営業者は、「営業していない間に屋台を置くための場所や、食材の保冷庫などを、営業する場所の近くで手配しなければいけない。決して簡単に移動できるものではない」と問題点を指摘する。今回の公募で、営業場所は成績順に選ぶことになっていた。つまり、営業中の屋台が場所を移動しなければならない可能性は高かった。「営業場所の移動がたいへんなことは、日頃、見回りにくる区役所の職員さんなら知っている。『タテ割り行政』にしてもあんまりだ」と憤る。

 市側には、屋台を選ぶ能力と資格に加えて、理解しようという努力も不足していたのではないか。屋台がどのようなものなのかを知らない(知ろうともしない)人間で行われたのが今回の選定ではなかったか。「(書類による第一次審査で)なぜ、落ちたのか、理由を聞いても福岡市は教えてくれない」と、屋台「かじしか」の大将・下村和代さんは、その悔しい気持ちを涙ながらに語った。毎日、県内外から予約して訪れるお客さんたちへの申し訳なさもある。

 高島市政で行われた、不透明かつ不可解な今回の屋台公募が、福岡の観光資源であり、市民の憩いの場である屋台を奪っていく。

【山下 康太】

 

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