中国と九州の経済交流の課題と可能性は?駐福岡中国総領事・何 振良 氏(後)
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今や世界第2位の経済大国として、政治でも大きな影響力を持つようになった中国。日本でもっとも中国に近い位置にある九州は、今後、対中ビジネスやインバウンドのさらなる発展が期待されている。とくに2017年は、日中国交正常化45周年をはじめ、さまざまな友好関係の節目を迎え、盛んに交流が行われる年となる。今回は、昨年7月に着任した、九州・山口8県を管轄する何振良駐福岡総領事に、中国と九州の経済交流における課題と可能性についてインタビューを行った。
(聞き手:弊社代表・児玉 直)
求められる世代交代
――自民党の有力な親中派・二階俊博氏(77)がまだ60代後半だったらいいのですが、政治家にも中国との交流を熱心にやる若い世代を増やしていかないといけませんね。
何 そうですね。私は以前、報道担当だったので、これまで友好団体の方と接する機会がありませんでしたが、総領事として赴任してみると、たしかに(友好団体に)ご年配の方が多いように感じています。後継者となる世代を育てていかないといけませんね。
――昔は、自民党にもたくさんいらっしゃいましたが、二階氏のように体を張って日中関係の改善に努めるような政治家が少なくなりました。
何 中国の発展を正しく見るという点では、日本の政治家は自信を持っていただきたいと思います。中国の発展を脅威と考えたり、批判したりするのは、ある意味、自信のなさの現れといえます。(名目GDPで)第3位の経済大国としての自信を持ち、平等に中国と交易・交流していただきたい。安倍首相は、いわゆる「正常国家」を目指して頑張っておられますが、日本は、経済面や他の分野でもレベルが高いわけですから、中国と上手くやっていけると思います。
――各地区の日中友好協会の若返りを図っていかなければ、交流が形式的なものになってしまいます。
何 国交正常化前の1950年10月に(公社)日中友好協会は発足していますが、二国間の関係がなかった時期に、友好団体を作るのは相当な勇気が必要だったと思います。その歴史を忘れずに、今後も大きな役割を担っていただきたいですね。一番問題になっているのは高齢化と、それにともなう活動費不足です。もちろん、その背景には二国間の政治関係がありますが、今の状況が続けば中国と日本、双方の交流の意欲が高まっていきますので、友好協会の活性化にも期待できます。
中国に広がる大きな市場
――福岡でも、定住されている中国の方がけっこういらっしゃいますね。
何 私たちも中国の企業や人に対して日本のPRを行っています。現在、九州に進出した中国の企業は、観光関連や太陽光発電といった新エネルギーなどを含むさまざまな分野で80社あります。規模が大きい会社はありませんが、皆、満足して営業しています。今後も中国の企業がどんどん増えていきますよ。
インバウンドもどんどん九州に来ていますが、足りないのは、ホテル、バス、ガイドです。国土交通省は1月20日召集の国会に、民泊解禁の新法や通訳案内士の規制緩和を進めるための関連法案を提出するそうですが、日本政府は、観光接待に関するハード面の整備をしなければなりません。たとえば、20年に訪日外国人旅行者4,000万人を目標としていますが、東京都には宿泊客1万5,000人分のホテルが足りません。地方はもっと足りないと思います。ここは、とくに力を入れてやるべきです。
中国系のお客さんが来るわけですから、中国系資本が入ってホテルを作っても良いのではないでしょうか。これに関しては、九州各県は割とオープンです。知事や市長の何人かにお話しましたが、みなさん歓迎するとのことでした。
中国の去年の国外投資額は1,700億ドル以上です。初めて国外投資額が国内を上回った一昨年に続き、中国に入ってくる外資よりも多くなっています。今後も、日本も含めて対外投資が増えていくと思います。それからこれはウィン-ウィンの関係になると思いますが、今後、中国は、環境、老人介護、新エネルギーなどの分野で技術・人材が必要です。日本は技術を持っていますが、市場はありません。中国には市場があります。
――高齢化問題でも、中国は日本の比ではないスピードで進んでいますね。とくに都市部では高齢者を身内で支えることは無理でしょうね。
何 とくに北京、上海など都市部の老人ホームは不足しており、名前を登録しても入所は2、3年後になっています。老人介護に関しては、領事館でも人材育成やノウハウの指導などで、日本と中国の企業をつなぐことを考えています。15年に、二階氏が約3,000人の訪中団を率いて中国を訪問した際、開催されたシンポジウムのテーマの1つが「老人介護と日中間協力」でした。この事例からもわかるように、老人介護の分野は、非常にポテンシャルが大きいと思います。
――本日はどうもありがとうございました。
(了)
【文・構成:山下 康太】関連記事
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