日韓の真の和解と友好は九州・福岡から~在福岡大韓民国総領事館 総領事・金 玉彩 氏(中)
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海をへだてた隣国として、日本と深いつながりを持つ国、大韓民国(以下、韓国)。昨年末の釜山の少女像設置に端を発した問題が続くなか、大陸への玄関口として古代から朝鮮半島との交流を担ってきた福岡は、どのような役割を果たせるのか。在福岡大韓民国総領事の金玉彩(キム・オクチェ)氏にお話を聞いた。
(聞き手:福岡県日韓親善協会副会長、ムライケミカルパック(株)代表取締役社長・村井正隆氏、弊社代表・児玉直)
少女像問題はお金の問題ではない
金総領事(以下、金) 一方で、ここまで日韓関係がこじれたのは、朴槿恵大統領就任式に安倍総理ではなく、麻生太郎副総理が来て、日本の植民地支配をアメリカの南北戦争に例えて発言したことにも原因があります。「南北で戦争をしたが、いまは仲良くしているじゃないか」と例えたんですね。奴隷制廃止をめぐる内戦と植民地支配のための侵略行為は違うものです。それが最初のボタンの掛け違いになったところがあります。その後、安倍総理の「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まってない」という発言もありました。これには韓国はもちろん中国、おそらくアメリカも不愉快だったと思いますよ。そして、河野談話と村山談話を見直すと。さらに靖国参拝まで行った。朴槿恵大統領は慰安婦問題の解決の道が開かないと首脳会談ができないと宣言した。そこから両国のギャップがひらいて、ようやく諸々をまとめたのが2015年12月の慰安婦合意でした。私も東京でお手伝いをさせていただきましたよ。李丙琪(イ・ビョンギ)大使(14年8月退任)と柳興洙(ユ・フンス)大使(16年6月退任)の2代にわたる大使が、日本の政治家の力添えを得て、安倍総理の周囲を説得したり、韓国国内も説得したりして合意に至ったわけです。
今回の釜山の少女像の問題に関しても、安倍総理の周りは、朴槿恵大統領が職務停止して、機能していないことをわかっているはずなんです。少女像を設置したことに対して、「極めて遺憾」や「韓国政府に何らかの措置をお願いする」などまではいいのですが、スワップの交渉中断や大使を帰国させるなどの措置をとった。「10億円出したから少女像を早く撤去しろ」と言うけれど、この問題の根本はそういうことじゃないんですね。
過去、解決できなかった問題を両政府の間で合意をして、少なくとも韓国政府はこれから慰安婦問題で日本を国際社会で攻撃することはないと、それが基本の合意なんですよ。もちろん少女像の問題は別の問題として、領事館の尊厳にかかわるから、できれば移動して日本の名誉も守る。当然そういう気持ちもありますが、韓国の国内事情がわかっている日本の外務省の方は、像を簡単に移動できないことはわかっているわけですよ。韓国国民の世論がそういう状態ですし、NGO団体が毎日像を囲んだりしている状況ですからね。
逆に我々としては、日本がアジア女性基金で慰安婦問題の解決にもっと誠意を出して、国の責任を認めて、国の予算で被害者を慰労することで終わったら良かったと思います。でも、安倍政権は「10億円出したのに少女像をなぜ移動してくれない。約束を守ってないじゃないか」と。――10億出せば済むという話ではないですよね。
金 韓国の政治家で「金だけの問題なら、我々が100億ウォン出すよ」と言う人もいます。でも、今回の問題を外交問題にした以上は、折り合いを作らないといけない。少女像を設置した韓国の民間団体に法律的責任を問うのは難しい。結局は謝罪と責任の問題となると思います。おそらく民間団体は反発するでしょうし、韓国内の世論も厳しいでしょう。それを我々が説得するわけです。慰安婦合意で謝罪とお金をもらった。それで慰安婦被害者の方々の心が少しでも癒されたら、各地の少女像などの問題が何らかのかたちで解決していくでしょう。それには時間がかかりますよと。でも、今回釜山で新たな像が設置されて悪い方向に行ってしまっている。どう解決したらよいのかというのが正直なところです。
(つづく)
【文・構成:犬童 範亮】<プロフィール>
金 玉彩(キム・オクチェ)
58歳、韓国慶尙南道生まれ。国防省を経て1993年より在日本国大韓民国大使館に書記官、参事官、公使として14年間勤務。2016年11月より在福岡大韓民国総領事館 総領事。関連記事
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