2024年11月27日( 水 )

憲法裁判所、朴大統領の弾劾を宣告(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 朴槿恵(パク・クネ)大統領は、今回の一連の件で憲法と法律に違反したことで、国民の信頼を裏切り、このような行為は憲法を維持するうえで、良くない影響をおよぼす可能性がある。そのため、大統領を罷免することで憲法を守る必要があることを明らかにした。

 しかし、憲法裁判所は朴氏の弾劾の理由のなかで、公務員人事介入による職権乱用、言論自由の侵害、セウォル号の沈没事故による国民生命の保護をおろそかにしたという点は認めなかった。

 一方、朴氏本人は、弾劾審理の初期憲法裁判所に提出した意見書と最終弁論の際に提出した書面では、これらの容疑を全面否定。だが、そうした朴氏の主張は認められず、憲法裁判所は法律に則って罷免を決定した。

 今回の弾劾決定についての国内の反応はというと、歓迎と憤慨で分かれた。その間、朴氏の辞任を要求するキャンドル集会が数回開催。最初は20万人くらいが集まったが、回数を重ねるごとに群集は増えてきた。ところが、今回の集会は今までの過激な集会と違って、平和的で落ち着いたものであった。もちろん民主労総という団体の主導で行われた集会であったものの、そこに参加する人々は一般市民の自発的な参加が多かった。民主労総の別の意図があったかどうかはわからないが、国民の民意を反映した集会であったことは間違いない。
 しかし一方で、これくらいの問題で大統領を弾劾するのは妥当ではないと主張する保守層も存在した。だいたい若い層に弾劾を強く主張する人が多い反面、弾劾に反対する保守の方は高齢者が多かった。2つの層が激しく対立し、溝は深まっていた。
 弾劾が発表された後、弾劾を賛成していた人たちは弾劾を歓迎する一方で、朴氏の支持者たちは弾劾が無効と主張し、憲法裁の周辺に集まり、裁判所の判断に対する激しい抗議デモを行った。警察によると、デモの最中に2人が死亡したという。

 それでは、今後はどのような展開になるだろうか。

 憲法裁判所が朴氏の罷免を決定すると、朴氏は直ちに大統領職を失う。まず朴氏は大統領官邸から出て、私邸に引越しをしないといけない。今回の弾劾で朴氏は他の大統領と違って、警護、警備を除いて、大統領のすべての特典を失う。年金も受給できないし、国立墓地に安置されることもない。それどころか、大統領を辞めると当然ながら追訴されない特権もなくなる。これによって検察は、また捜査を継続する可能性が高い。大統領の権利を利用して今までは捜査を拒否してきたが、これからはそれが通用しない。今後、捜査が再開することによって、新たな事実が明るみに出る可能性はとても高い。一部では、朴氏は亡命するだろうという噂が立っていたが、証拠隠滅と逃亡の恐れがある場合には、逮捕状が発行されることになるかもしれない。今後、朴氏は、あらゆる捜査から逃げることはできない。

 今回の弾劾に、大統領官邸では激震が走った。朴氏は、側近の国会議員を通じて声明を発表。「大統領としての使命を最後まで全うできず、申し訳ない」と謝罪する一方で、「真実は必ず明らかになると信じている」と述べた。

 朴氏の弾劾が決定されたため、60日以内に次の大統領の選挙を行わないといけない。経済問題や、THAAD(サード)配備問題などの課題が山積しているなかで、60日間の政治空白も手痛いし、次の大統領を選ぶにはあまりにも短い期間である。
 1日も早く、政治も経済も正常な状態に戻ることを願いたい。

(了)

 

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