2024年11月27日( 水 )

中国のサード報復と韓国経済(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 北朝鮮は核実験を繰り返し、北朝鮮の核の脅威はますます高まっている。このような北朝鮮の核の脅威に対処するため、韓国は米国の高高度防衛ミサイル(THAAD:Terminal High Altitude Area Defense missile・サード)の配備を決定した。ところが、中国はこれに不快感を示し、韓国経済に対する締め付けを行なっている。まだ中国政府の公式的な制裁にはなっていないが、輸入時の検査強化、韓国への団体観光の禁止、韓国企業現地法人の税務調査などさまざまな手法を動員し、韓国に揺さぶりをかけている。今回の中国の報復行為は、中国経済に依存しすぎている韓国経済のリスクを浮き彫りにしている。韓国は輸出と内需両面において中国経済に大きく依存している。

 まず、輸出から見てみよう。16年の韓国の中国への輸出は1,244億ドルで、中国からの輸入は870億ドルを記録した。韓国は中国との貿易で374億5,000万ドルの黒字を達成している。中国への輸出は韓国の全体輸出額の4分1を占め、中国は韓国の最大輸出相手国である。輸出品の内容はというと、ほとんどが中間財と部品である。中国は韓国から中間財と部品を輸入して、加工貿易をしているわけである。このように韓国と中国は経済的に密接にリンクしている。このような状況をよく知っている中国政府は輸出通関を厳しくするなど、非関税障壁を高め、韓国の輸出にダメージを与えている。

 ところが、問題は圧力のレベルがエスカレートしていることである。中国はテレビショッピングで韓国製品の放送を中断させたり、韓流芸能人のドラマ・番組の出演と現地公演を制限したり、韓国製品のテレビコマーシャルを禁じるなどの制裁を加えている。

 中国の報復は輸出だけではない。中国人の韓国への観光を自制させるなど、韓国の内需にも影響を及ぼしている。

 世界経済が低迷しているなかで、中国人観光客はここ数年韓国内需の活性化に大きく寄与してきた。昨年韓国を訪れた観光客の半分は中国人であった。韓国を訪問した中国人観光客の数は13年に52.5%の増加、14年には41.6%の増加を示し、韓国経済の内需活性化に大きく貢献をした。ところが、15年には韓国でMERS(中東呼吸器症候群・マーズ)が発生し、中国人観光客の増加は一時3.8%の減少に転じることになる。しかし、16年には再び中国人観光客は34.8%の増加にシフトし、16年に韓国を訪問した中国人観光客は806万名に上った。週末に明洞(ミョンドン)に行くと、中国人観光客で道は埋め尽くされ、免税店では免税品を買おうとする中国人観光客でごった返していた。ところがサード報復で中国の団体観光客の訪問がキャンセルされると、明洞はガラガラになっている。今まで中国への輸出と中国人観光客で急速に売上を伸ばしていた化粧品業界、それからエンターテインメント業界、免税店業界にサード報復は青天の霹靂である。ある調査機関の分析によると、韓国政府が昨年の7月にサード配備を決定してから6カ月間、中国関連銘柄の時価総額は27兆ウォンも消えたとされている。

(つづく)

 
(後)

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