2024年11月27日( 水 )

中国のサード報復と韓国経済(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 もっと具体的な例を上げると、カタツムリクリームで有名なイッツスキン社は前年同期比24%の売上減少を記録している。カタツムリクリームは中国でヒット商品になり、6秒に1個が売れるようになった商品であったが、サード配備が決定してから中国政府から衛生許可が得られず、売上は減少していた。それで売上減少に歯止めがかからなくなるのではないかと懸念を強めている。

 もう一つ例を上げるとロッテである。ロッテはサード配備の敷地を韓国政府に提供したということで、中国政府から叩かれている。中国政府は四つのロッテマートの店舗に1カ月間の営業停止処分を下した。理由は消防許可の違反と言うことになっているが、報復の性格が強い。それだけでなく、ロッテは税務調査を受けたり、ホームページーがハッキングされたり、サード報復の矢面に立たされている。そのほかにもホテル、免税店業界などでは中国人観光客の増加を見込んで設備投資と店舗拡張などをしたが、サード報復で夜眠れなくなっている。

 韓国政府は中国の反発がこのような厳しいものになるとは予想できなったようだ。それには責任がある。しかし、アメリカと中国の利害がぶつかっているなかで、韓国自らが選択できる道は限られている。安保と経済のなかで、どちらが大切かというと、当然国家の存立に関わる安保が優先されるべきだ。安保なしの経済繁栄はありえないので、韓国政府は中国との経済関係より米国との安保問題を重視し、その態度を明確にする必要がある。ところが、残念なことに韓国の政界でも足並みが揃っていない。中国はサード配備を止めることはできないことを知っていながら、韓国を揺さぶっているかもしれない。

 来月には習近平(シー・ジンピン)国家主席の訪米で、ドナルド・トランプ米大統領との会談が予定されている。この会談の成果が一つの分水嶺になるだろう。ドナルド・トランプ米大統領と習近平国家主席が友好的になり、サード配備に対する解決の糸口が見つかれば、中国のサード報復は消えていくだろう。しかし、その会談でも意見が合わず解決できなかったら、中国の共産党全国大会が開かれる10月まで中国の報復は現状維持、またはエスカレートする可能性もある。習近平国家主席にも自分の政治的な立場があるからだ。

 それでは、中国の今回の報復は正当な措置であるのか?中国のサードに関する主張と行動は論理的には無理がある。今回韓国に配備されるサードより探知距離が長くて、中国の内陸まで監視できる長距離レーダーは台湾とハワイ、それから日本にすでにある。

 台湾の早期警報レーダーの最大探知距離は5,000km以上で、このレーダーは中国のICBM(大陸間弾道ミサイル)基地までくまなく覗き見することができる。またハワイに配備されたXバンドレーダー(SBX)も探知距離は 4,800kmであるという。上記のようにすでに中国の内部を探知する方法はある。それに日本にレーダーを配備する時には何も言わなかった中国なのに、韓国のサード配備はなぜ問題にしているのか。中国の真意はどこにあるのだろうか。

 中国という国は、歴史的に見ると経済合理性よりも政治の論理が優先されることがあった。すでに尖閣列島を巡って、日本と領土紛争を起こし、反日デモ、レアアースの輸出禁止、日本製品の不買運動などを展開した中国である。

 日本の対応などを参考にしながら韓国も外交的な解決策を模索する一方、日本および東南アジアの観光客誘致など代案を模索する必要がある。

(了)

 
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