廃業する屋台に立ち入り調査、高島市政の『市民いじめ』
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屋台条例で屋台が消える赤坂地区
3月31日、福岡市の屋台公募に落選した屋台にとって、市の営業許可が取り消しになる日。営業を終える屋台には常連やこれまでの報道を通じて廃業になることを知った客が次々と訪れ、屋台営業者に励ましの声をかけ、別れを惜しんでいた。そのようななか、高島市政は、屋台営業者の生計を奪ったといえる屋台基本条例を持ち出し、別れの場に冷や水を浴びせた。
公募の募集エリアから外されたことで、新規営業者の開業もなく、屋台そのものがなくなる福岡市中央区の赤坂地区。廃業になる2軒の屋台は、営業開始から大勢のファンで賑わった。職場や住まいが近くにある人が多く、10年以上、足繁く通っている客も珍しくない。市民の憩いの場を奪われることを悲嘆する声もあがっていた。
午後8時ごろ、赤坂地区の屋台「てるちゃん」に、中央区役所の市職員が訪れた。屋台営業者に対し、屋台に入りきれない客のために屋台外に設置したテーブルと椅子を撤去するよう指導したのである。屋台外の客席の設置は、屋台基本条例施行規則に定められたルールに違反する。口頭による複数回の指導に従わなかった場合は、是正措置を求める注意書が与えられる。
市としては、最後まで屋台基本条例(13年9月施行)に従ってくれということだが、屋台公募の実施といわゆる「名義貸し」の許可取り消しを定めた同条例が廃業の根拠でもある。同条例は、屋台の設置場所や規格、営業時間(屋台の準備から片付けの時間を含めて午後5時から午前4時まで)などのルールを定め、違反した場合は、営業停止、許可取り消しという罰則がある。ルールの遵守状況は数値化され、市のホームページで公表されてきた。ただし、その数値は今回の屋台公募の審査で評価されることはなかった。
大勢の屋台ファンの前で指導・調査
昨年10月5日、現在の営業場所が募集エリアから外されていることに疑問を持った「てるちゃん」の大将・青木絵里奈さんは市役所を訪れた。持参した常連客が中心となって集めた存続を願う約1,300名の署名は、「見る必要がない」などと公募担当のにぎわい振興課・三苫和弘課長に拒絶された。青木さんに同行した周辺地区の住民代表(自治会長)は、「夜間の防犯上の観点からも、地域に屋台は必要」とするも考慮されることはなかった。
そうして迎えた屋台営業の最終日。続々と集まる客を無下に帰すわけにはいかない。青木さんはルール違反をわかったうえで温情措置を求めたが、「それはそれ」と市職員は冷たく突き放した。挙句の果てに、同行していた他の職員が、大勢の客の前で、所持していたメジャーで屋台周辺を測り始めた。屋台とその客にとっては、追い出しともいえる“嫌がらせ”に他ならない。
市職員の立ち入り調査は市長の命令(屋台基本条例第34条)で行われる。屋台の存在を市民から奪った高島宗一郎福岡市長は、屋台公募でおきた選定委員の不正問題についても「市の責任」としながら、自ら頭を下げることをしない。屋台選定委員の任命責任は市長にある(屋台基本条例第28条)。高島市長は、福岡市民に恨みでもあるのか。なぜ、しつこく“市民いじめ”を繰り返すのか。
17年3月31日、赤坂地区から屋台の灯りが消えた。
【山下 康太】
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