追い詰められた自営業者(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
韓国経済の両極化が進んでいる――。
先日、サムスン電子の2017年第1四半期の実績が発表された。それによると、サムスン電子は創業以来で2番目に大きい9兆9,000ウォンの営業利益を計上、営業利益率は19.8%と前年同期比48.2%増の成長を示し、市場を驚かせている。このサムスン電子の好業績は、半導体の好況と有機ELディスプレイの売上伸長によってもたらされているようだ。
市場調査機関のICインサイツによると、サムスン電子の第2四半期の半導体売上は149億4,000万ドルが予測されている。一方で、インテルの売上は144億ドルに止まると見られており、サムスン電子が“王者”インテルを抜いて半導体世界1位の座に躍り出ることが予測されている。今回の予測は、DRAMが前年比で39%の価格上昇をしたことと、NAND型フラッシュメモリが前年比で25%も値上がりしたことが影響しているようだ。
こうしたことを受け、サムスン電子の株価は上昇を続け、株価の上方修正が相次いでいる。実は、これまでも韓国株式市場におけるサムスン電子の比率は高かったのだが、今後、ますますもっと高くなっていくことに、専門家は警戒感を示している。
いずれにしても、半導体とディスプレイが牽引するサムスン電子の好調で、韓国の平沢(ピョンテク)、牙山(アサン)などの市は好景気に沸き、サムスン電子と取引のある部品会社や、装置メーカーなどを中心とした関連企業では、我が世の春を謳歌している。こうしたサムスン電子の好調ぶりを韓国経済の“光”とするならば、韓国経済の“陰”にあたるのが自営業者であろう。
一口に自営業者といっても、産業別にさまざまな自営業者がいる。しかし、本稿でいう自営業者とは、小売、飲食、宿泊、サービス業などの従業員5名未満の事業所を指す。具体的には、日常生活でよく接することになる食堂やスーパー、旅館、ベーカリー、美容室、理容室、銭湯、ビデオレンタル、コンビニ、カラオケなどである。
まず前提として、韓国には自営業者が多い。統計庁によると韓国の自営業者の数は550万人とされているが、実際には600万人くらいになるだろうと推定されている。韓国の自営業者の比率は全体の26.5%に上り、OECD加盟国の平均である15.4%に比べ2倍近くある。だが、自営業者の問題の深刻さは、自営業者の数よりもその中身であろう。
自営業者550万人のうち約400万人は、1人もしくは給料の支払いを必要としない家族で経営している自営業者で占められている。自営業者の売上高の構成を見ると、約半分にあたる250万人は、年間売上高が4,600万ウォン未満だという。実際に、自営業者の5人に1人は月の平均収入が100万ウォンにも満たないという統計がある。
(つづく)
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