世界で加熱する新技術開発競争(3)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
実際、2012年にはスペイン、オマーン、エチオピアをはじめ南米チリなどでも効果が確認されている。日本では鳥取砂丘という環境を生かし、鳥取大学の乾燥地研究センターが同様の実証研究で成果を上げ、海外への技術移転にも積極的に取り組んでいる最中である。アフリカや中近東の砂漠地帯を中心に日本からの技術を生かした砂漠の緑化と農業生産が試みられている。
しかも強気のホッフ氏は「このウォーター・ボックスを使い、20億ヘクタールの森林を育てることができれば、現在人類が放出しているCO2を全て吸収することも可能になる」とまで豪語する。地球温暖化対策にも役立つというわけだ。「人類が過去2000年の間に伐採してしまった森林を自然の力を利用して取り戻すことが夢だ」と熱く語る。
実は、似たような技術はカナダの発明家も既に商品化している。カナダの「エレメント・フォー」という会社は家庭用の造水機を開発し、すでに市場に投入済みである。この造水機の特色はやはり空気中の水蒸気を吸収し浄化した後に飲み水として利用することを可能にしたものである。
「ウォーター・ミル」と呼ばれる造水機で、使用する電力は極めて少ない。一般家庭の壁に装着し、空気中からフィルターを通して不純物を取り除いた後に水を製造する。最近流行しているインフルエンザなどの病原菌もマイクロ波を照射することで殺菌除去する機能も付いているため、単に水を空気から絞り出すだけではなく、大気中に含まれる雑菌や細菌も除去してくれるというので人気が出ている。
こうした空気から水を造る機械の開発が盛んになってきた背景には何があるのだろうか。実に驚くべき事実なのだが、「大気中には大量の水分が含まれており、その量たるや地球上のすべての河川に流れる水の量より8倍以上も多い」ということ。そのため、湿度が30%以下でも、このウォーター・ミルは十分水分を吸収し、飲み水に変えることができるという。全自動の湿度感知器がついているため夜明けの最も湿度の高い時期に効率的に水分を吸収できるようになっている。
すでにアメリカ、イギリス、イタリア、オーストラリアでは販売が始まっている。日本でもすでに特許申請が認められているという。そこで、気になるお値段であるが、1機1200ドル。約13万円。アメリカでは人気が高いというが、果たしてどこまで日本人の味覚に合った水を提供してくれるものか。日本ではペットボトルが普及しており、こうした造水機の需要はまだそれほど大きくはなさそうだ。
とはいえ、アメリカのサンフランシスコ市ではペットボトルの使用を職員に対して禁止するという条例を可決したほどだ。水不足に対する対策の1つであるが、今後、日本にも波及しないとは限らないだろう。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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