2024年11月20日( 水 )

「GINZA SIX」、オープンから18日目で152万人が来店~周辺の飲食店にも波及効果

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 東京・銀座の新名所「GINZA SIX(GSIX)」が順調なスタートを切った。さらに、同施設による経済波及効果が周辺地域に表れ始めた。銀座5~7丁目界隈の飲食店では売上が約1.5倍、客数が3割増などの声がある。同施設は、今月7日に来店者数152万人を記録。その客足が周辺の店舗へも流れているようだ。

地下2階の行列店が呼び水に

開店早々、限定品を目当てに走る客

 オープンから1カ月が経過したが、開店時には今も行列ができる。地下2階の食品フロアにある菓子販売店「ISHIYA GINZA」には、開店早々から先を争うように来店客が押しかける。お目当ては『Saqu(サク) LANGUE DE CHAT』などのここでしか販売していない限定品で、正午には完売する。同店は『白い恋人』の石屋製菓(株)の直営店。運営する石屋商事(株)の営業部営業二課課長の有川靖彦氏は、「東京周辺の方が多く、性別を問わず手土産として使用される方が圧倒的に多い。札幌を含めた地方からの出張で来た人や旅行客も多く来ている」と話す。道外初出店となる同店限定の商品を新たな銀座名物として、根付かせていく方針だ。

 このほか食品フロアには、ビーカー入り手作り焼きプリンの『マーロウ』や、京都宇治茶の老舗「辻利」が販売する『辻利ソフト濃い茶』などに行列ができる。これらの店はいずれも銀座初出店舗で、GSIX限定商品で勝負し、早くも結果を出しているようだ。「辻利」を運営する片岡物産(株)マーケティング本部マーケティング部第2課主任の高澤未樹氏は、現在までの来店者の流れについて、「上階はウィンドーショッピングに留まり、低価格な地下2階フロアで土産物の購入や体験をして帰り、土産話をするという流れが見て取れる」と説明する。銀座の巨大商業施設を一目見る観光目的で訪れ、行列店で土産を購入するという来店者の様子がうかがえる。

「辻利」店頭の様子
※クリックで拡大

 GINZA SIX リテールマネジメント(株)広報の公式発表によると、開業から18日目の5月7日には、152万人(1日平均約8万5,000人)の総来館者数を記録した。初年度目標の2,000万人を上回るペースで推移し、来館者数は順調に増加。来店者の属性は、老若男女、国籍を問わず、幅広い層となっている。
 アーティストの草間彌生氏による新作インスタレーション『南瓜』の吹き抜け真下(2階)に、(株)大丸松坂屋百貨店が運営する雑貨を中心とするセレクトショップ「SIXIEME GINZA(シジュームギンザ)」がある。同店は中央通りから入館してすぐの場所にあり、草間氏のアートを見上げて撮影する際の絶好のポイントでもある。店舗は2階の吹き抜け部分の約150坪を6つの空間に分けて、「本質を極めた大人たち」のライフスタイルを提案する洋服や靴などを販売している。

 運営元の大丸松坂屋百貨店MD戦略推進室の米原氏は、「GWまでは都内在住者が来店し、GW中は観光地と化して地方からの来店者が多かった。GWを過ぎてからは、地方からの顧客は減り気味」と話す。売上は非公開だが、予想を上回るペースで推移しているという。売上の約15%は中国・台湾からの観光客が占める。米原氏は「彼らはブランドを熟知しており、指名買いすることや、ほかにはない銀座ならではのものを購入する」という2つの傾向があると説明している。

来店者が周辺に落とす飲食マネー

開店後、人で溢れる行列店店頭
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 これまで銀座1~4丁目に流れていた人の波は、GSIX誕生により5~7丁目にも確実に流れ始めた。GSIXの隣にある「ビヤホールライオン 銀座7丁目店」は、今年で83年目を迎える老舗のビヤホール。(株)サッポロライオンの小野貴志氏(支配人代理)によると、「GSIXのオープン1週間前から内覧会などがあり、動きがあった。5月半ばまでは前年同月比でランチタイムは約17%増、20時以降は約30%客数が伸びた」という。新規顧客が増えたことは明らかで、買い物や観光後に立ち寄り、ビールを飲みながら食事をするという従来とは異なる動きが見られている。同氏は、ビールを飲みに来る客と比べて客単価は低いが、今後リピートにつながればと期待を寄せる。

 銀座5丁目にも影響が及んでいる。「CAFÉ de GINZA MIYUKI-KAN」5丁目店の上村和博店長は、GSIXオープン後の状況について「店の前の通りを歩く人が増えた。店の売上も1.5~1.8倍に増加した。劇的な変化を遂げた」と驚きを隠せない様子だ。同店の近くにはホテルがあるため、もともと来店する観光客は多かったが、おしゃれな若者など新たな層の来店が増えたと話している。

 GSIXのバス発着所がある三原通りの寿司屋「函館 呉竹」では、GSIXのオフィス勤務者の来店を見込んでいる。ランチ営業を行っていないため、今のところ顧客は常連のみだが、今後に期待しているようだ。また、通り抜けができるように道路の上に施設を建築し、従来の通りをそのまま残したあづま通りには、集客を見込んで移動してきた店舖もある。GSIXによる経済波及効果に、周辺店舗から熱い視線が寄せられている。

集客の仕掛け、次の一手は?

 GW時の賑わいは一段落。オープンから1カ月が経過し、現在の客足は落ち着いてきている。“観光地”として飽きられずに、人を呼び込むための次の一手は何か。GSIXリテールマネジメントプロモーション部によると、「来客者はショッピングだけでなく、朝7時オープンの屋上庭園を散策する人や、オフィス階に勤務するビジネスマン、ツーリストサービスセンターを利用する観光客、能楽堂公演を楽しむ人など、複合機能を備えるGINZA SIXならではの多様なシーンを創出している」と施設に備わった人を寄せつける仕掛けについて説明する。観光客も重要なターゲットの1つ。GSIX1階には「観光バス乗降所」や「ツーリストサービスセンター」を設置。同広報によると、観光案内所自体が目的地となるような楽しい仕掛けを用意して、観光客を「おもてなし」するという。

 来店者が携帯で撮影する吹き抜け空間の草間彌生氏のインスタレーションの展示も、2018年2月25日までの期間限定だ。展示が変われば、またそれを見に人が集まり、各店舗へ流れていくと予想される。一度訪問すれば満足する“観光地”か、定期的に通いたくなる商業施設として定着するか。「銀座の新たな顔」としての真価が問われ始めた。

【越中 矢住子】

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