全国の鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造建築物に潜む、構造計算の偽装(2)
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――鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)建物の構造計算においては、何か、問題点はありますか?
仲盛 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)という構造形式は、鉄筋コンクリート構造の内部に鉄骨部材によるフレームを組み合わせることにより、コンクリートの剛強さと、鉄骨のしなやかさを併せ持つ構造です。SRC造の1階の柱脚(最も重要な足元の部分)の構造を大別すると、内部の鉄骨を基礎・地中梁部分に埋め込んだ「埋め込み型柱脚」と、内部の鉄骨を地中梁の上部に設置し埋め込まない「非埋め込み型柱脚(ピン柱脚)」の二種類に分類されます。柱脚の固定度が高い埋め込み型柱脚と対照的に、非埋め込み型柱脚(ピン柱脚)では、1階柱頭(1階柱の上部)に比べ、鉄骨の固定度が極端に小さくなります。要するに、柱脚部分だけは、鉄筋コンクリート造となっているのです。
現在、久留米市内のマンション「新生マンション花畑西」の設計と施工の瑕疵に関して裁判が行われています。私は、原告である管理組合や区分所有者から依頼を受け、このマンションの構造検証を行いました。施工の不具合は目を覆うばかりの惨状でしたが、構造計算においても、地盤種別を偽装するなどの不正がありました。
鉄骨の柱脚は、非埋め込み型柱脚(ピン柱脚)であり、保有水平耐力計算におけるSRC造の係数の低減を適用できないのですが、このマンションの構造計算では、係数の不適切な低減が行われていました。SRC造は、内部の鉄骨のしなやかさを考慮し、保有水平耐力比(いわゆる耐震強度)を計算する際の構造特性係数(Ds値)を低減できるという特例が設けられています。ピン柱脚の場合、ベースプレートより下の部分には鉄骨が存在しないので、この特例を適用できないことは言うまでもありません。しかし、多くの構造設計者は、この特例を悪用し、構造特性係数(Ds値)を低減した不正な構造計算を行っていました。建築確認の審査を担当した行政庁も、構造特性係数(Ds値)に関する特別な認識がなかったため、不正なDs値の低減を見逃していたのです。久留米の新生マンション花畑西の例で言えば、1階のX方向のDs値が低減され0.3として計算されていましたが、正しくは0.35であり、「0.35÷0.3=1.17」→17%も、不正な耐震強度が採用されていたのです。
私の一級建築士免許処分の対象となった14物件のうち、3物件がSRC造でしたので、調べたところ、低減を適用していない物件もあれば、低減を適用した物件もありました。恐らく、全国の鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建物の多くにおいて、保有水平耐力計算の係数の不適切な低減が行われていたと思います。
(つづく)
【文・構成:山下 康太】関連キーワード
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