2024年11月22日( 金 )

会社を乗っ取った元サニックス創業メンバー(後)~行政指導に不可解な不動産取引

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 福岡市博多区金隈で産廃処分場を運営する(株)和幸商会(本社:福岡市博多区金隈、箭内伊和男代表)だが、現在はすでに会社としては稼働していないとも聞かれている。かつては、解体業でも活発な動きを見せていた同社に何があったのか。関係者への取材で見えてきたのは、サニックス創業メンバーの乗っ取り行為だった。

度重なる行政指導

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 福岡労働局の発表で、和幸商会が約6,700万円もの雇用調整助成金を不正に受給していたことが判明している。休業対象労働者を休業日に就労させることにより、 助成金を不正に受給していたことが福岡労働局の調査により確認されたものだった。その頃には、年間売上高は1億円ほどまで減少していた。その後の箭内氏について、「社内にある物品など現金に変わるものはすべて売り飛ばしていた」と関係者は語る。

 また和幸商会は宇美町にバイオマス燃料施設を保有していたことがある。業績不振から現在は競売によって、別法人のものになっているが、当時は木チップの燃料化も行われていた。この事業も頓挫。材料となる木廃材は産廃場に山のように残っていた。

 処分に費用がかかるので、火をつけたが、炭になった木廃材は管理が必要とされる「産廃」となった。処分するよう行政処分がくだり、少しずつ搬出することになった。それが一度目の行政指導だと関係者はいう。

 そして、今年4月14日に福岡市へ通報があった。廃油の入ったドラム缶がいくつも処分場に置かれているとのことだった。即日、市は現場に入り、油の存在を確認。再利用の為に回収していたものだが、設備を失ったことで、廃油だけ残ってしまっていたのだ。市は緊急措置として、土の上に置かれていたドラム缶を、シートを敷いたコンクリート上へ移動させた。

不可解な不動産取引

 福岡市は和幸商会に処理計画を提出させ、改善に向けて進んでいる模様だが、同処分場の土地所有権をめぐり、不可解な取引が確認された。それが添付の不動産登記である。

 和幸商会は(株)クリーン金隈(和幸商会と同所、吉岡直之代表)に2015年4月に土地を売却。その後、購入したクリーン金隈が、個人Xに2016年9月に転売している。不動産登記に見られるように、今年3月にクリーン金隈が処分禁止仮処分を申し立てている。

 この不動産取引に関して、弁護士に見解を求めた。それが以下だ。


 所有者は,自由に不動産を処分できますので,処分禁止の仮処分をするというのは,所有者に不動産を処分されてしまうと困る人が,正式な裁判をする前に,処分できないようにするのが処分禁止の仮処分です。

 本件では,申し立てたのが,前所有者であるクリーン金隈ですので,前所有者であるクリーン金隈が,現在の所有者とされている個人からこの不動産を取り戻そうとしているということになります。不動産を取り戻そうとしている理由は,登記だけからは特定はできません。

 一例としては,通常,不動産売買は,一括決済で,なおかつ決済と同時に所有権を移転しますが,クリーン金隈から個人への不動産売買については,何らかの理由で,所有権の移転を先行させて代金は後日支払いであったり,一括ではなく,分割支払という条件であったりという特殊な契約をしていて,結局,個人が代金を払わなかったため,クリーン金隈が売買契約を解除して,不動産の返還を求めているということが考えられます。

 不動産の所有権移転が,平成28年9月26日に売買を原因として平成28年10月1日に登記されているのに対し,抵当権は,個人Xが個人Yに対し,平成28年12月21日に6,000万円を利息10%で貸したとして,平成29年2月13日に登記されています。

 この不動産を担保に6,000万円の融資を受けられるのであれば,なぜ売買の際に融資を受けて,一括決済していないのか,平成28年12月21日に6,000万円もの多額の貸付をしておきながら,すぐに担保設定せず,3ヶ月近く経過した平成29年2月13日になってやっと担保設定登記をしたのか、等通常の取引では考えにくい怪しい点が見受けられます。


 謎の多い不動産取引だ。そもそも同処分場は満杯になりつつあり、不動産価値はほとんどない。これを別会社が購入する意味はどこにも見当たらないのが正直なところ。これ以上のトラブルが起きないことだけを祈るばかりだ。

(了)
【東城 洋平】

 
(中)

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