2024年12月23日( 月 )

十分にあり得る消費税減税提示衆院総選挙

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、安倍首相が今回の内閣改造で政策の基軸を「憲法」から「経済」に移し、「経済対策」で総選挙につなげる戦術が浮かび上がったとした、8月6日付の記事を紹介する。


安倍首相が三たび、私の政策提言を流用するとの観測が浮上している。

2012年12月に第2次安倍政権が発足し、株価の急騰が生じた。野田政権が実施していた財政再建原理主義の超緊縮財政政策を修正したことが株価急騰の背景であった。
私は2013年版TRIレポート『金利・為替・株価大躍動』に、円安進行と株価急騰の見通しを示した。
2014年版TRIレポート『日本経済撃墜』では、安倍政権が2014年4月に消費税率を5%から8%に引き上げることによって、日本経済が撃墜されることを予測した。
2015年版TRIレポート『日本の奈落』では、2015年10月に予定されていた消費税率の10%への引上げを中止または延期することが日本経済の崩落を回避するための唯一の方策であることを指摘した。
安倍首相は2014年11月、2015年10月の消費税増税を延期する方針を表明して2014年12月の衆院総選挙を実施した。筆者提案があるルートを経由して官邸に届けられ、安倍首相がこの提案を呑み込んだものであると見られる。

日本経済が「奈落」に転落するシナリオは回避された。2016年版TRIレポート『日本経済復活の条件』は、圧倒的多数が中国経済崩壊=チャイナ・メルトダウンを予測するなかで、中国経済底入れの見通しを示した書である。現実には、この見通し通りに世界経済は緩やかな底入れを実現した。同時に、2017年4月の消費税増税の中止を強く提唱している。
2016年前半、日本株価は低迷を続けた。為替市場では円高傾向が強まった。この情勢下で、株価暴落を回避するには、財政政策を緊縮から中立、あるいは積極に転換するしかないことを主張した。この提言が、あるルートを通じて官邸に伝わり、安倍首相は消費税再増税を再延期したのである。

安倍政権が2度の消費税増税延期を決定していなければ、日本経済は崩落し、安倍政権は消滅していたはずだ。私は安倍政権の一刻も早い退場を求めているから、私の経済政策提言が活用されて安倍政権が延命していることに忸怩たる思いがある。

2017年版TRIレポート『反グローバリズム旋風で世界はこうなる』には、トランプ大統領選出で日米の株価が急騰する見通しを示した。そして、次の衆院選への戦略として、反安倍政権陣営が、「原発廃止」「戦争法廃止」「消費税減税」の3つを基本政策公約として明示し、この旗の下に「政策連合」を形成するべきだと唱えてきた。
ここで示した「消費税減税」の提唱が、やはり、あるルートを通じて官邸に伝わり、安倍首相がこの提案の盗用を検討しているのだと見られる。

次の衆院総選挙は来年12月までに行われる。内閣支持率は急落し、今のままでは大惨敗必至である。主権者に驚きを与えて選挙で大敗しないために、消費税率引下げを提示する可能性は十分に考えられる。消費税率を引き上げた政権が消費税率を引き下げることは、政策の一貫性の視点からは論外だが、そのような正論は安倍内閣に通用しない。選挙に勝つためには何でもやる政権である。

今回の内閣改造ではっきりしたことは、政策の基軸を「憲法」から「経済」に移したことだ。「経済対策」で総選挙につなげる戦術がくっきりと浮かび上がった。臨時国会の最終局面で消費税減税の方針を打ち出し、そのまま総選挙に突入するシナリオを念頭に入れなければならない。

※続きは8月6日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1813号「消費税減税VS消費税廃止が総選挙争点になる」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

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