ファストファッションの功罪
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2008年ごろから日本にファストファッションの波が押し寄せた。トレンドに乗った商品をいち早く、低価格で購入できるファッションの流行は、リーマン・ショックの時代には理にかなったものだった。今もなお、ショッピングモールや若者の街にはH&M(スウェーデン)、ZARA(スペイン)、GAP(アメリカ)、ユニクロ(日本)の店舗が立ち並ぶ。
その背後で17年8月、ニューヨーク5番街にある高級百貨店サックス・フィフス・アヴェニュー(Saks Fifth Avenue)のデパートディスプレイには“古着の山”が展示されていた。これはフランスのファッションブランド「ヴェトモン(Vetements)」が、アパレル業界の過剰生産に対する問題提起を狙ったもの。「彼らは需要以上の生産を行っている」と同業界(とくにファストファッション業界)を厳しく批判しながらも、深刻な問題を私たちに投げかけている。
ファストファッションの抱える問題は、環境問題や労働者の酷使など、華やかな業界とは真逆で深刻なものである。とくに13年に起こったバングラデシュのダッカ近郊ビル崩落事故では、マンゴ、ベネトン、プリマークなど欧米ブランドの縫製工場で働く4,000人を超える労働者のうち、1,000人を超える死者を出す「史上最悪の産業事故・労働災害」といわれ大きく取りざたされた。ユニクロはそれ以前からリサイクル活動や難民などの支援活動を行っていたが、H&M、ZARA、GAPなどの企業も、委託先工場での労働者に対する生活賃金の保障のための取り組みを進めている。古着回収で500円のクーポンを発券するなど、リユースを身近に感じることができる店舗もある。
最近では「エシカルファッション」という言葉を耳にする。エシカル(Ethical)は、直訳すると「倫理的な」「道徳上の」といった意味で、環境問題、労働問題、社会問題に配慮した、良識にかなった素材の選定や購入、生産、販売をしているファッションを指す。まさに、ファストファッションと対照的な言葉である。時代を象徴するファッション・トレンドに、私たちはどう動くか。
【松本 悠子】
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