駅前に新たなランドマーク 南の副都心・大橋(4)
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ららぽーと開業を機に多彩な魅力がさらに強化
冒頭に述べたように、まもなく駅前の新たなランドマークとして「OHASHI HILL」が開業する予定の大橋エリアだが、遡ること19年4月には、旧・大橋西鉄名店街を全面的にリニューアルしたかたちで「レイリア大橋(RAIRIA Ohashi)」が開業している。
レイリア大橋では、核テナントをそれまでの西鉄ストアから「レガネット」へとブランド変更するとともに、増床移転を実施。地下1階南側部分に飲食・レストラン店舗や食物販店舗を集めるほか、その他の店舗配置も、利用者目線で使いやすいような動線への配慮がなされている。開業から5年以上が経過してすっかりとまちに溶け込み、もはや大橋エリアにとってなくてはならない施設の1つとなっているようだ。
そして22年4月には、大橋駅から直線距離で約1.2kmと比較的近い距離にある福岡青果市場跡地において、大型複合商業施設「ららぽーと福岡」が開業した。ただし、直線距離で約1.2kmといっても、大橋駅から直線的な道路は通っていないため、大橋駅前1号線から塩原交差点で御供所井尻1号線へと入り、高木1丁目交差点で下月隈高木線に入った後、弓田交差点から筑紫通りに入ってららぽーと福岡に到着するといったように、やや迂回するルートを通らねばならない。その場合の距離は約2.2km。途中で那珂川をわたらなければならないこともあり、心理的な距離としてはそれほど近くに感じられない。
とはいえ、ららぽーと福岡の開業に合わせるかたちで西日本鉄道(株)は西鉄バスのダイヤ改正を行い、大橋駅とららぽーと福岡を直行で結ぶ路線を新設。1時間あたり3~4便(約15~20分間隔)、1日の運行便数は約100便(50往復)で、大橋駅から約10分でららぽーと福岡まで行けるようになっているとあって、バス利用を考えればぐっと近い印象だ。西鉄電車利用の場合は大橋駅が最寄り駅となることもあって、大橋駅を起点にららぽーと福岡を訪れる人々も相当数いる模様で、週末ともなるとバス停に多くの人が待っている様子がうかがえる。大橋エリアで分譲マンションが開発される際には、PRポイントの1つとしてららぽーと福岡への所要時間の短さが謳われているケースも多く、現在の大橋エリアにとって少なくない影響を与えているように見受けられる。だが一方で、ららぽーと福岡を目的地とする人にとって大橋は単なる通過点に過ぎず、駅周辺の賑わい創出にはあまり寄与していないという意見もある。
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以前、vol.26で取り上げた際に、大橋エリアの総括として「突出した特長がないのが特徴で、さまざまな要素が“それなりに高いレベル”でオールラウンドに備わっているのが強み」と評したことがある。福岡市の南部広域拠点や副都心として、南区の行政の中心地であり、交通の結節点であり、商業地であり、文教地区であり、さらには「住みやすさ」に定評のあるベッドタウンでもある大橋エリアは、そのオールラウンドさこそが強みであることに変わりはなく、ここ数年で、その強みにますます磨きがかかったようにも思える。
その一方で、地場不動産関係者からは「以前に比べて駅周辺―とくに西口の活気がなくなり寂しくなった」「大橋は、周りから見られるイメージと、実際のイメージとのギャップが大きいように思う」という意見も聞かれる。とはいえ、南部広域拠点である大橋エリアが今後、新たなランドマークである「OHASHI HILL」の魅力を取り込みながら、どのような進化を遂げていくのか、引き続き動向を見守っていきたい。
(了)
【坂田憲治】
旧芸工大校舎が国登録文化財へ
九州大学(九大)大橋キャンパスで長らく親しまれてきた建築物群が24年11月、「造形の規範となっているもの」として、国の登録有形文化財(建造物)に登録される見通しとなった。
登録対象の建造物は、「旧九州芸術工科大学環境画像棟」「旧九州芸術工科大学工業音響棟」「旧九州芸術工科大学画像特殊施設棟」「旧九州芸術工科大学音響特殊施設棟」「旧九州芸術工科大学工作工房」の5棟で、これらの建物は通称「フライパン広場」と呼ばれる正方形平面の広場を囲むように並んで建ち、一体として大橋キャンパスのなかでもとくにシンボル的な建築空間を形成している。竣工当時としては革新的な打放コンクリートやガラスブロックでつくり出される意匠、建物と広場の空間構成などが、後の建物の規範となっているものとして評価され、今回の運びとなった。
大橋キャンパスの場所にはもともと、1926(昭和元)年に福岡県立筑紫中学校(現・福岡県立筑紫丘高校)が開設され、52年からは福岡学芸大学(現・福岡教育大学)のキャンパスとして活用。その後、福岡学芸大学が63年に宗像市に移転した後、68年に創設を控えていた九州芸術工科大学(芸工大)の敷地となった。03年に芸工大が九大と統合して九大芸術工学部になって以降、敷地は大橋キャンパスと呼ばれている。
今回、国登録有形文化財に登録される見通しの5棟は、いずれも戦後の高度経済成長期に建てられた建築物であるとともに、芸工大の創立時に助教授として着任し、戦後日本を代表する建築家の1人となった香山壽夫氏の初期の代表的な建築作品として高く評価されているもの。環境画像棟は、下層を吹抜ラウンジ、上層をバルコニーとした階段状の立面で、2階レベルの中庭状広場と巧みに調和。工業音響棟は、フライパン広場を挟んで環境画像棟と正対するかたちで建ち、環境画像棟と同意匠で対峙することで、壮麗な広場風景をつくり上げている。画像特殊施設棟は写真スタジオなどを配する画像工学専門施設で、中央玄関上部の壁面を浅く窪ませてバルコニーとし、左右対称の均整の取れた外観となっている。音響特殊施設棟は無響室などを排する音響工学専門施設で、画像特殊施設棟の立面を反転させ、渡り廊下を挟んで左右対称の外観となっており、2棟で広場東面を構成している。工作工房はデッサンや木工用の作業棟で、中央を見通す左右対称の均整の取れた外観で広場の一角を構成。5棟はいずれも1970年の竣工で、多少の改修は加わっているものの竣工当時の面影を色濃く残し、今なお現役の校舎として使用され続けている。
九大では今回の旧芸工大校舎5棟の国登録文化財への登録の発表を踏まえて、大橋キャンパスをより魅力ある場所としていけるよう、学内外に開かれた学びの拠点として活用していきたい意向を示している。
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