ゼンショーHD、一難去ってまた一難 買収した総菜店でO157感染(前)
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(株)ゼンショーホールディングスの小川賢太郎会長兼社長は、同社を売上高日本一に押し上げた「外食の風雲児」である。ご難が続く。傘下の牛丼チェーン「すき家」の過重労働問題で苦境に立たされたが、社内改革の成果がようやく表われてきた。それで封印したM&A(合併・買収)戦略を再起動。今度は買収した食品スーパーが運営する総菜店で、O157に感染した女児が死亡した。「食の安全」を企業理念とする小川氏には痛恨事となった。
O157に感染した女児が死亡、総菜店「でりしゃす」を閉店
〈群馬、埼玉両県の総菜店「でりしゃす」の総菜を食べた男女計21人が腸管出血性大腸菌O(オー)157に感染し、女児(3)が死亡した問題で、同店を運営する「フレッシュコーポレレーション」(群馬県)は20日、でりしゃす全17店舗を閉店したと発表した。「総合的な経営判断」という。〉(朝日新聞デジタル版9月20日付)
総菜店「でりしゃす」の系列店をめぐる食中毒が発覚したのは8月21日。埼玉県熊谷市の籠原店で、同月7~8日にポテトサラダを買って食べた男女8人が腹痛や下痢を訴え、一時は意識不明の重体になった5歳女児もいた。
感染者は、熊谷市の熊谷店、群馬県前橋市の六供(ろっく)店で総菜を買った客に拡大した。六供店では発症した11人全員が8月11日に総菜を購入。東京都在住の3歳女児が死亡した。発症者24人のうち21人からO157が検出された。感染の原因となった食品や感染経路は特定できていない。各総菜を大皿に載せ客が好みの量をトングで盛り付ける量り売り形式だったため、トングの使い回しが疑われた。
女児の死亡事故を受けて、総菜店を運営するフレッシュコーポレーションは、でりしゃす全17店の閉店に追い込まれた。実は、ゼンショーHDが買収したのがこの会社なのだ。17年5月20日、(株)フジタコーポレーションから(株)フレッシュコーポレーションに社名を変更。社名を一新して、船出した直後に、運営する総菜店でO157に感染した女児が死亡したのである。
外食に次ぐ柱として食品スーパーに進出
ゼンショーHDは16年11月21日付けで、群馬県の地盤の中堅スーパー、フジタコーポレーション(太田市)を買収した。買収額は124億円。
フジタは76年創業、78年設立の食品スーパー。「フジマート」や「アバンセ」など食品スーパーを展開。総菜店「でりしゃす」を含め、北関東を中心に44店を持つ。16年3月期の売上高253億円、営業利益8億円だ。フジタの買収は、小川氏にとって特別な意味を持つ。封印してきたM&A戦略を再開した第1号となったからだ。
1982年にゼンショーを創業した小川氏は積極的な出店と買収で事業を拡大。「すき家」は牛丼1位、「はま寿司」は回転ずし2位、ファミリーレストラン「ココス」、パスタ専門店「ジョリーパスタ」なども手掛ける。
ゼンショーHDの17年3月期の売上高は5,440億円。ファミリーレストラン(株)すかいらーくの3,545億円(16年12月期)、ハンバーガーチェーン日本マクドナルドホールディングス(株)の2,266億円(同)に大差をつけて、外食業界ダントツの首位だ。
小川氏は小売事業を外食に次ぐ経営の柱に据えた。12年11月に中堅食品スーパー(株)マルヤ(埼玉県春日部市)を買収したのを皮切りに、関東の食品スーパーを次々と傘下に収め100店舗を展開した。だが、その直後につまずく。牛丼店「すき家」の過重労働問題である。(つづく)
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