2024年12月22日( 日 )

福岡を代表する老舗菓子舗の4代目、新たな100年に向けての次なる挑戦(後)

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(株)石村萬盛堂 石村 善之亮 代表取締役社長

今後100年続くために、今、何が必要か

 ――今回、4代目の社長に就任されての意気込みをお聞かせください。

これからも地元・博多で愛され続ける菓子舗を目指して

 石村 弊社は創業からこれまで100年以上、今年で創業112年という長きにわたって続いてきた会社です。そのなかで、「弊社が100年続いてきたのはなぜか」ということを考えたときに、創業者が地元の博多で「鶴乃子」という商品を最初につくり、それを地元・博多の土産物にしようという先々代の想いがあって、その想いに共感していただいた博多の皆さまがいたからこそ、100年続いてこられたというのがあると思います。
 では、「今後100年続くためには、今、何が必要か」ということを考えたときに、やはり地元・博多で愛されるということは必須の条件だと思っています。それを踏まえたうえで、今後100年続くためには、ほかに何が大切なのかということを、今必死で考えながら、それを社員にも伝えていこうとしています。
 私が就任して4カ月が経ちましたが、大きな方針というのは、社員には伝わっていると思います。あとは、それをどのようにかたちにしていくかというところは、何回も繰り返し訴えていかなければならないと思っています。

 ――「鶴乃子」一筋でやっていけるのであれば、公認会計士流にいえば非常に効率的な、いわゆる“良い経営”ができるのでしょうが、そういうわけにもいきませんからね。

 石村 やはり時代に合わせて、変化・対応をさせていくことが重要だと思います。おそらく「鶴乃子」だけを売っていると、石村萬盛堂というブランドだったり知名度だったりといった、会社としての“格”や“風格”のようなものが、ここまで大きくは広がってはいなかったと思います。これまでも「鶴乃子」に頼るだけではなく、洋菓子にも進出したほか、あるいはホワイトデーといった新たな需要を創造して全国に一気に広がったというのが、すごく大きな要素だったのではないかと思います。

 ――あともう1つは販売戦略ですが、今後、店舗のくらい置づけはどうされていきますか。

 石村 店舗に関しては、今後は拡大というよりも、ブラッシュアップを図っていきたいと考えています。主要な店舗は新しくリニューアルしていくことも考えていますし、磨きをかけていくという段階に入っています。あまり店舗数を増やしすぎると、管理不十分ということにもなりかねませんので。

 ――現在の店舗数は。

 石村 現在は福岡県を中心に、佐賀、長崎、熊本、大分、鹿児島に、全部で68店舗あります。

 店舗形態は、和菓子を販売する「石村萬盛堂」のほか、洋菓子の「ボンサンク」、和洋菓子の複合店舗「お菓子の広場いしむら」の3形態に大別されます。そのほか、昨年9月には、これまでのロードサイド型店舗からコンセプトを一新した、まったく新しいタイプの新コンセプトショップ「イシムラトロア」を出しています。
 また今年9月には、九大の六本松キャンパス跡地にオープンした「六本松421」内に、新たに「善太郎商店」という店舗を出店しました。これは、弊社の創業者である石村善太郎の志を受け継いだ新たな挑戦になりますが、和菓子を身近にすることをコンセプトに、季節の素材や洋菓子の生地などを使ったオリジナル和菓子を販売することで、普段あまり和菓子を食べない若年層などをターゲットにしています。
 このように、お菓子の新商品開発だけでなく、新たな店舗やブランドの展開も含めて、全体のブラッシュアップに力を入れていきたいと思います。

 ――今後は石村善之亮社長がトップとして、次のブランドづくりや商品づくりに取り組んでいかなければなりませんが、考えようによっては楽しいのではありませんか。

 石村 そうですね。お菓子はひとたびヒット商品が出ると、一発逆転といいますか、野球にたとえるなら“9回裏2アウトで逆転満塁ホームラン”――そういったところがあります。なので、ものすごく夢はありますね。

 ――これから長い戦いになりますので、新商品開発で食べ過ぎて身体を壊さないよう、くれぐれも気をつけられてください。今後とも期待しています。

(了)
【文・構成:坂田 憲治】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:石村 善之亮
所在地:福岡市博多区須崎町2-1
設 立:1949年2月
資本金:9,500万円
売上高:(17/6)約60億円

<プロフィール>
石村 善之亮(いしむら・ぜんのすけ)
1979年5月、福岡市中央区出身。修猷館高校、東京大学文学部卒。2008年に有限責任監査法人トーマツに入社。17年4月、(株)石村萬盛堂入社。同年7月、同社代表取締役社長に就任。

 
(中)

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