欠陥マンション裁判で法律を曲解、結論ありきの福岡高裁判決(前)
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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二(構造設計一級建築士)
技術顧問 京極 勝利(耐震構造家)福岡県久留米市の分譲マンション「新生マンション花畑西」の耐震偽装に関し、マンション管理組合らが久留米市に建替え命令の義務付けを求めた控訴審で、2017年12月20日、福岡高等裁判所(西井和徒裁判長)は控訴人の請求を棄却する判決を言い渡しました。行政訴訟において、行政が敗訴することは稀有と言われており、この訴訟も例外ではなかったことになります。実に理不尽な図式です。
しかし、判決に目を通すと、行政側に軸足を置いた、意図的で強引な法律の適用が目につきます。判決は、最初から結論が決まっており、その結論に向けて裁判官が強引に理由付けしたと考えても不合理ではなく、大きな疑問の残る判決となっています。以下、具体的に説明いたします。
建築基準法第3条第2項を別次元の項目に強引に適用
判決の23頁に「建築基準法9条1項は、特定行政庁において、建築基準法令の規定または同法の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物について除却などを命じることができる旨規定しているが、同法3条2項は、同法の規定は同項所定の既存建築物などには適用されない旨規定している。建築基準法3条2項の趣旨は、改正後の建築基準法の規定を既存の建築物に適用すると、既存の適法な建築物が法令の改廃などにより違反建築物になるという不合理な結果となり法的安定性を害する・・・適用を除外することにある。」とあります。
控訴人(原告)が主張しているのは、このマンションの構造計算が、地盤種別の偽装や不正な係数の採用などの偽装により、構造検証の結果、耐震強度を35%しか有していないということ。また、鹿島建設の意図的な手抜き工事を考慮すれば、耐震強度は実に15%しかないので、是正措置を講じるよう、行政である久留米市が命令をすべきであるという主張です。
福岡高裁の判決は、控訴人(原告)の主張と正面から向かい合わず、建築基準法第3条第2項を持ち出して、最もらしい判決を書いています。しかし、同法第3条第2項の規定は、「建築基準法が改正された場合、改正前の基準法に基づいて設計および建築確認を受けた建築部にまで遡って新しい基準法が適用されることはない」という趣旨の規定です。これを既存不適格といい、一般に、既存建築物の隣に増築をして用途が同一の場合などに、既存の建物に現行の建築関係法令を適用しないという運用が行われています。
ここまで読まれた方はすでにお気付きだと思いますが、このマンションの裁判は、既存不適格を問題としているのでなく、このマンションが建てられた時点(つまり、建築確認された時点)で、建築基準法令に違反したため、「耐震強度が不足しているので、何らかの是正措置が必要」という趣旨です。福岡高裁は、まったく異なる項目の条文を強引に適用して、控訴人(原告)の訴えを棄却しているのです。
このような結論ありきの判決が平然と言い渡されるという現実には戦慄を覚えます。「行政を勝訴させる」という大前提の下に、裁判所が懸命に理由付けをするのですから、民間が行政に勝訴する道は閉ざされていると言っても過言ではないでしょう。民間人は行政の意のままに動く以外許されないのです。
(つづく)
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