2024年11月23日( 土 )

欠陥マンション裁判で法律を曲解、結論ありきの福岡高裁判決(後)

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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二(構造設計一級建築士)
技術顧問 京極 勝利(耐震構造家)

まだまだ判決に疑問あり

久留米市の責任を追及する住民ら

 今回の福岡高裁の判決では、このほかにも疑問点が多々あります。たとえば、裁判において、久留米市は、「管理組合が保管している設計図書は本物であるか不明」と驚くような主張をしましたが、裁判所はこの久留米市の荒唐無稽な主張を採用しています。また、控訴人(原告)側の構造検証は、設計者本人が行った検証ではないので、信憑性に疑問があるという久留米市の主張も、裁判所は強引に採用しています。そもそも、提訴以前に、管理組合は、久留米市に構造検証結果の精査を求めていたのです。精査から逃げ回った久留米市の責任逃れのための主張を、裁判所が大真面目に採用することに、強い意図を感じざるを得ません。そこには、三権分立を掲げる民主国家の姿はありません。

 このマンションに関しては、偽装された不正な設計を行った設計事務所である木村建築研究所、数々の施工ミスを行った施工業者である鹿島建設に対し損害賠償を求める裁判も進められています。こちらの損害賠償訴訟においては、被告である木村建築研究所も鹿島建設も裁判所も、管理組合に保管されていた設計図書を本物だと認識したうえで、裁判を進めています。設計事務所や工事中設計図書を管理していた鹿島建設が本物だと認識しているのですから、これほどたしかなことはありません。

 構造検証が設計者本人より行われていないという点についても、同じ構造検証資料を見た木村建築研究所から技術的な反論がまったく出なかったことから、検証方針に問題がなかったといえます。

行政裁判は結論ありき!

 今回の福岡高裁の判決で明らかなように、裁判所は、行政を負けさせる訳にはいかないという事情があるのです。行政の誤りを認めていては、行政に混乱が生じるので、裁判所は、社会秩序を守るという大義名分の下、行政有利の判決を書かざるを得ないのでしょう。しかし、このような裁判所の姿勢は、憲法の理念である三権分立に反しています。もはや民主国家とはいえないのが我が国の現状です。

 今回の福岡高裁の判決を受け、久留米市は、責任逃れができたと思っているかもしれませんが、そもそも、単純な偽装だらけの構造計算による建築確認申請に対しノーチェックで確認済証を交付した久留米市に、この耐震強度不足の大きな原因があるのです。以前にも指摘しましたが、このマンションと同じように、建築確認審査でノーチェックのまま、確認済証が交付され建設された建物が、久留米市内におびただしい数、存在しているのです。これらの建物を調べれば、久留米市による建築確認のずさんさが判明するはずです。

 久留米市に限らず、2007年より以前は、各地でずさんな建築確認審査が行われていたという実態があります。行政に誤りがあったとしても、行政と司法が結託して、行政の立場を守るという、憲法に反した状態が続くことは、国民に対する裏切りであり、看過することはできません。私たちの考えに共鳴される方は、ともに立ち上がろうではありませんか! 

 権力者の横暴を許すことは、国民の権利を放棄したことになりますので、1人でも多くの関係者および国民が声を上げることを願います。立場的に行動を起こすことが難しいという方は、私たちに相談していただければ、代弁して声を上げることもできます。私たち(協)建築構造調査機構は、行政や大企業に対して是正を求める行動を、徹底的に継続していく所存です。

(了)

 
(前)

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