2024年11月22日( 金 )

「ベストカスタマー」を中心に置く5理念で オークラのあるべき姿を追求する(前)

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(株)ホテルオークラ福岡 代表取締役社長 水嶋 修三 氏

 国内老舗ホテル御三家の一角を占める、ホテルオークラ。帝国ホテル創立者のD.N.A.を受け継ぎつつも同ホテルは、より迎賓館としての機能を発展させたという。西日本随一の繁華街・中洲の地を睥睨するように建つ威容はしかし、地域に溢れる文化の香りを色濃くまとう。

前年比105%以上 売上の伸び堅調

 ――業績面を中心に昨年を振り返っていただけますか。

 水嶋代表(以下、水嶋) 非常に順調な1年でしたが、それは当ホテルだけに限ったことではなく、同業他社もだいたい同じだったのではないでしょうか。よくいわれるようなインバウンド需要の拡大というよりも、大きくは国内の景気が上向いてきたことが影響していると考えています。もちろん九州北部豪雨のような大規模災害による打撃はありましたが、経済全体としてはゆるやかな拡大傾向にあります。当ホテルについていえば、2016年熊本地震の際にインバウンド需要が落ち込んだことはありましたが、その時もすぐに回復しました。シティホテルについていえば、「インバウンド頼み」といった姿勢のホテルはそれほど多くないと思います。

 ――ホテルの稼働率は75%程度が収益の目安といわれていますが、昨年はいかがでしたか。

 水嶋 おかげさまでずっと85%程度で推移しています。宴会やレストランなどの飲食部も含めた売上高は約62億5,000万円~63億円で、対前年比105%以上です。こういった数字にも景気の回復を感じますが、唯一の懸念は地政学的リスクですね。

 飲食部門や宴会部門の売上も、前年に比べて伸びていますね。今期、なんといっても一番うれしかったのは、上半期の数字が良かったことです。通常、ホテル業界は4月から9月の上半期は赤字なんです。秋から年末年始にかけて売上を伸ばし、トータルで黒字というのがいつものパターンですが、2017年度は珍しく上半期に黒字で折り返すことができました。すべての部門で売上が伸びましたから。

 ――昨年、宿泊業界で話題になったのは民泊件数の増加です。訪日客の約12%が民泊を使っているという数字もあります。LCC+民泊でコストを抑えるという流れはホテルオークラにはまったく関係ないものでしょうか。

 水嶋 これまでのところ、明確に民泊を意識したことはありません。民泊のようなスタイルを求めるお客さまはいつの時代もいらっしゃいますが、当ホテルのサービスを求めるお客さまと重なることはなく、ほとんど影響はないと考えています。

文化の薫るホテルへ

 ――昨年、何か大きなイベントはありましたか。

昨年12月に行われた、千住真理子氏と横山幸雄氏のクリスマスディナーショー

 水嶋 昨年3月に新しく取り組んだイベントは、「オークラ・マルシェ」と名付けた陶磁器とワインのイベントです。このイベントが成功したのは、ホテル自体に文化的なものをまとうだけの素地があったからでしょう。私が11年に赴任した際に、「文化の香りのするホテル」を目指すことを提案しました。その年は3月に東日本大震災が発生したこともあって、チャリティーロビーコンサートをスタートさせました。月に1回、ロビーでクラシックコンサートを開催しているんです。それを振り出しにホテルの中を使ったさまざまなイベントを行ってきました。美術的なことであれば、客室を使ってアートフェアアジアを開いたり、ダンスパーティーもしましたよ。

 ほかにも、たとえばクリスマス期間に開催されるディナーショーは通常、演歌歌手であったりポップス歌手の方を呼ぶのが定番でしたが、新たにクラシック演奏家の方を2、3人お呼びしてコンサートをしています。昨年12月のディナーショーでは前川清さんと並んで千住真理子さん、さらに著名なピアニストである横山幸雄さんのディナーショーを開きました。このあたりは他ホテルと少し違うテイストを生み出せたのではないかと思います。ワインも文化ですし、能楽師の方にトークショーをしてもらったり、手を変え品を変えしながら、継続発信しています。

 ――「ホテルの格式」を意識されているのでしょうか。集客力では多少落ちても、文化発信を押し出したいと。

 水嶋 その通りです。ホテルの立地している場所もまさに「文化の香り」の濃い場所で、博多の町人文化のど真ん中なんですね。山笠の廻り止めにもなっているし、どんたくもここから出て行ったりします。近くには櫛田神社や博多座があってアジア美術館もある。和と洋の文化が混然一体となっているんですね。非常に贅沢な場所だと感じています。

 櫛田神社さんとは以前から神社婚などでもご一緒させていただています。当ホテル内にも神前結婚式場がありますが、そこでの挙式には櫛田さんから来ていただきますし、神社まで行くときには柳川から博多川まで花嫁舟を曳いてきて、それに花嫁さんをお乗せします。最近は和式婚礼を希望される方が少し増えてきましたね。洋式をやりつくしてしまって、原点回帰するようなところがあるのかもしれません。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:水嶋 修三
所在地:福岡市博多区下川端町3-2
設 立:1996年2月
資本金:5億円
売上高:(17/3)62億5,000万円

<プロフィール>
水嶋 修三(みずしま・しゅうぞう)
1947年久留米市生まれ。70歳。北九州市立大学文学部卒業。2011年、(株)JTB九州社長から(株)ホテルオークラ福岡社長に就任。

 
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