【九州大学】ひきこもり治療につながる画期的発見~「わがまま」ではなく体質か
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ひきこもり「治療」の大きな一歩となるのか。九州大学病院の加藤隆弘講師(精神医学)と、米オレゴン健康科学大学、マレーシア・モナッシュ大学の国際共同研究グループが、「ひきこもり者」の血中物質に特徴的な傾向があることをつきとめた。
研究グループが、ひきこもりでない大学生と、ひきこもり者の血液を採取して比較したところ、血中物質のうち、炎症を調べるマーカー(CRPとよばれるたんぱく質など)の高値や、尿酸とHDLコレステロールの低値が、ひきこもり傾向に関連していることがわかったもの。男女は、それぞれ違うかたちで数値に変化がある。また、「経済ゲーム」とよばれる行動実験によって、比較対照された血中物質が「他者への協力や信頼」などの社会的行動と関連していることも、今回の研究で判明している。
ひきこもりは、「学校や仕事に行かず、半年以上自宅に閉じこもっている者」とされ、2015年に実施された内閣府の調査によると、国内に約54万人(15歳から39歳)いるとされる。ひきこもり者の高齢化も進んでおり、両親の死去などでひきこもり者が完全に孤立すると、十分な社会的支援が届かないまま放置されることが懸念されていた。
これまではひきこもりの原因として、「自身のわがまま」や「親が甘やかしている」など、性格や生育環境が問題視されることが多く、家族とひきこもり者は孤立・孤独と偏見との板挟みで苦しんできた。治療というアプローチが一般化することで、社会全体で支える土壌ができる可能性があり、今回の研究成果は治療するという意味以上に、偏見を解消する効果があると期待される。研究グループの、九州大学病院・加藤隆弘講師のコメント
この研究成果によって、「ひきこもりになりやすいタイプがわかった」とまでは言い切れませんが、社会的インパクトは大きいと思います。これまで、ひきこもりは性格や成育環境などがもっぱらの原因と考えられがちで、生物学的なことはあまり考えられてきませんでした。今回、いくつかの血液マーカーが、ひきこもり傾向の人や人付き合いを避けがちな人などで増減することがわかりました。九大病院では、精神医学的・心理社会的側面に加えて採血による生物学的評価も行い、多軸的にひきこもり者を評価することで、どのような治療が向いているのか研究を進めています。研究が発展すれば、炎症が高いのであれば、そちらを重点的に治療するなどの方針が立てられるようになるかもしれません。偏見が解消されて、身体の病気と同じように早く専門家のもとで治療することが普通になってほしいと思います。
▼関連リンク
・九大病院 気分障害ひきこもり研究外来HP(完全予約制)関連記事
2024年11月20日 12:302024年11月11日 13:002024年11月1日 10:172024年11月22日 15:302024年11月21日 13:002024年11月14日 10:252024年11月18日 18:02
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