2024年11月28日( 木 )

朝鮮半島3月危機説の真相(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 米国の一部の軍事専門家の中には、北朝鮮の反撃なしに、核施設だけをピンポイントで攻撃できるという人がいる。しかし、筆者の考えでは、先制攻撃を実施するには、いくつもの高い壁がある。韓国にも「戦争をする覚悟がないと平和は訪れない」と主張する強硬派がいる。傲慢で世間知らずの金正恩委員長の顔面に一発食らわすと思っただけでもせいせいする。しかし、その後の展開を考えると、先制攻撃は無謀すぎる。

 人間は他人のことは簡単にいう。女房に弟のことで叱られたことがある。「あなたがそのように甘やかすから弟がいつもそうするのだ」と。しかし、当事者になれば話はそれほど簡単ではない。アメリカが先制攻撃をしても、被害を受けるのは韓国なので、このような議論が可能なのかもしれない。しかし、必ず反撃するだろう北朝鮮を考えると、先制攻撃をするということは全面戦争の覚悟をしなければならない。

 それを知っているがゆえに、韓国の大統領は北朝鮮に弱くならざるを得ないかもしれない。それに、韓国人の安全は横においても、韓国にはアメリカ人が15万人もいる。自国民の安全対策を講じない以上、簡単に先制攻撃に踏み込むことはできない。さらに、ピンポイントの先制攻撃で見事に核施設を破壊できるなら話は別であるが、現実問題として、北朝鮮の核施設は、このような爆撃を避けるためにすべて地下化しているようだ。それに数十箇所に分散しているが、それを正確に把握するのは難しいので、攻撃ターゲットが明確ではない。

 米国の先制攻撃には中国の同意が必要である。今中国と北朝鮮の関係は冷え切っているが、米国と韓国主導による統一を中国は望んでいない。北朝鮮に米国が駐屯するようになるのは中国にとっては悪夢である。韓国には中国人が101万人いる。よほどのことがない限り、米国による先制攻撃が中国の賛同を得るのは容易ではないはずだ。

 しかし、日本は少し立場が違うかもしれない。朝鮮半島で緊張が高まることで、安部総理の政策推進が容易になる。それに、朝鮮戦争の時のように日本に特需が発生する可能性もある。現在、世界中で日本と韓国の製品は競争をしているが、韓国が戦争で莫大な被害を受ければ、その分、日本は国際競争で有利になる。

 日本の書店には米国の先制攻撃が迫っている論調の本が多いのも一脈通じる。軍事専門家の話によると、今の準備体制は不足している指摘がある。選択肢の1つとして検討していることをまるで明日にでも先制攻撃があるように煽っているのはなぜだろうか。しかし、備えあれば憂いなしで、すべての選択肢を前に、冷静に考えて未来に備えることは賢明なことだろう。今日も水面下で外交上の交渉が続けられている。

(了)

 
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