2024年12月22日( 日 )

積水ハウス、恒例のお家騒動 クーデターが勃発(4)

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CEO制を導入し、積水ハウスのドンとして君臨

 それから10年。社長退任の時がやってきた。どうやって権力を維持するか。2008年、阿部俊則氏を5代目社長に抜擢した。阿部氏は、13人いる取締役のうち最年少である。寝首をかかれる心配は小さいと判断したのだろう。阿部氏は東北学院大学文学部を卒業し1975年の入社。仙台支店の営業マンとして、全国で1位、2位を争うトップセールスマンだった。営業畑を歩き出世した点は和田氏と似ている。
 この時、積水ハウスはCEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)制を導入。和田氏が会長兼CEOに就き、トップの座に座り続けた。

 前出の『FACTA』によると、社内に敵のいない和田氏が常に意識していたのは大和ハウス工業の樋口武男だという。同じ関西学院大学法学部卒で、樋口氏が3歳年上だ。売上高は積水ハウスが2兆1,440億円(18年1月期見込み)に対して、大和ハウスは3兆7,500億円(18年3月期見込み)。大きな差をつけられた。

〈和田氏は樋口氏に対して一方的に嫉妬の炎を燃やした。日本経済新聞の『私の履歴書』に樋口氏が取り上げられると、和田氏は日経新聞上層部に猛アプローチし、掲載枠をもぎ取った。14年に樋口氏が旭日大綬章を受章すると、和田氏も政官界に大攻勢をかけて16年に旭日大綬章を受賞した。〉

 凄まじいまでの権力欲、名誉欲である。

新社長が漁夫の利を得るか

 各メディアは、積水ハウスのお家騒動を一斉に報じた。阿部氏もいつまでもナンバー2に甘んじるつもりはない。〈「和田さんの動きがタダ漏れだったから、阿部さんがすぐに反撃できたわけです。勝負は決まっていた」(関係者)〉(日刊ゲンダイ2月22日付)

 和田氏の追い落としに成功した阿部氏が、積水ハウスの新しいドンになるのか。権力の座から引きずり下ろされた和田氏は、黙って引き下がるような人物ではない。阿部氏に復讐するために、反撃を開始した。会社が公表していない調査報告書の内容がマスコミにリークされた。積水ハウスの危機管理は、どうなっているのかと首を傾げざるを得ない。阿部氏憎しに燃える和田氏が、次ぎにどんな爆弾を仕掛けるか。社内は戦々恐々だろう。

 新社長に就任した仲井嘉浩氏は、京都大学工学部工業化学科の卒業。経営中枢の経営企画畑を歩いた。52歳と若い。和田氏と阿部氏が双方の刺し合いで共倒れになれば、漁夫の利を得ることができる。歴代のトップがそうであったように、数年後には、ドンと呼ばれることになるかもしれない。それが積水ハウスの社風であるからだ。

(了)
【森村 和男】

 
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