2024年11月22日( 金 )

乗っ取りの狙いは処分場の「拡張」か 実現すれば10億円規模の売上

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 取締役会・株主総会の偽装や文書偽造――。数々の違法行為が発覚したのは、福岡市から許可を受け、金隈産廃処分場を運営する(株)和幸商会と(株)クリーン金隈。和幸商会をめぐっては、サニックス創業メンバーである箭内伊和男現代表が創業者を洗脳し、かつてのナンバー2を追い出した経緯を詳報してきた

廃業するかと噂されたが

 当時(2017年7月)の取材でわかったのは、和幸商会の備品や設備などの動産はもちろん「現金になるものは、ほとんど売り払われてしまった」という実情だった。同処分場の受入容量も限界点に近づきつつあり、産業廃棄物の最終処分場が満杯になってしまえば金を産まなくなるため、処分場の土地や株式も売却していた。そのため、今回の乗っ取りが実行される前の構図は、産廃処分業の「許可」は和幸商会、処分場の土地を「所有」するのはクリーン金隈、「経営権」は両社の全株式を保有する吉岡直之氏という複雑なものになっていた。

「まだ稼げる」

 その入り組んだ構図のなかで経営陣らが思いついたのは、処分場の拡張だった。もし拡張が許可されれば、15万~20万m3の受入容量が生まれ、6億円から10億円の売上が見込めるという。関係者によると、遅くとも昨夏頃から和幸商会は処分場の拡張を計画し、関係各所に相談を持ち掛けていた。

 さらにそこに登場したのが、今回の乗っ取りの首謀者とされる柏田清光氏だ。宮崎県内の産廃処分業D社を飛び出した柏田氏は、昨年11月ごろから和幸商会に出入りするようになった。福岡市からの改善命令が解かれた後、今年1月ごろには、それまで金隈産廃処分場とは取り引きのなかった社名入りのトレーラーが県内外から搬入を始めた。拡張さえ実現できれば仕事は舞い込んでくることがわかった「乗っ取り」経営陣が、「何としてでも拡張を実現したい」と鼻息を荒くする。

 拡張の可能性を知り得たころに、事業を手放す方針から、乗っ取り計画へと舵は切られた。それが一連の取締役会・株主総会の偽装による役員交代と増資である。2つの偽装工作によって、登記上、吉岡氏は役員を外されて最大株主の座を失ったが、柏田・箭内両氏の間で進められたもう1つの画策が、ある1枚の文書から明らかとなった。

【東城 洋平】

▼関連リンク
・首謀者は国政出馬経験のある元・JFL監督~産廃処分場「乗っ取り」事件
・こうして会社は乗っ取られた(1)~これが偽造された辞任届だ!
・偽装された議事録 前代未聞の乗っ取り劇第2幕~「和幸商会」

 

関連キーワード

関連記事