震災復興が結んだ日本とネパールの新たな絆!(4)
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映画監督・東京情報大学総合情報学部教授 伊藤 敏朗 氏
観客数で同日公開の『STAR WARS』を抜いた
――『カトマンズの約束』は日本に先がけて、昨年末(12月15日)にネパールで公開されました。その時の様子を教えていただけますか。同日に公開の『STAR WARS』最新作をその観客数で抜いたと聞いています。
伊藤 『カトマンズの約束』は2017年9月11日、首都カトマンズ国立劇場で大々的な完成プレミアム試写会を開きました。約600の席はすべて埋まり、その反響はすごく、現地マスコミで大きなニュースとなりました。続けて、12月15日からネパール全土60館で公開されました。現地公開題名は『My Love~Promise for Kathmandu~』(ネパール語吹き替え版)となっています。
公開の時は私とJDR医療チームの看護師役を演じた主演女優の水谷りぼんさんと一緒にネパールに行きました。ネパールの12月は映画のオフシーズンなのですが、2人で挨拶に訪れた複数の映画館は、とてもよくお客さんが入っており、大ヒット間違いなしだと思いました。興業的には、ネパールで配給される映画数に比べて映画館の数がとても少なく、ほとんどの映画は最大で1週間しか上映されません。まれに、インドのマサラ・ムービーの大作が2週間、3週間上映されることがあるだけです。また、現在のネパールの映画館は、すべて日本と同じシネコンスタイルなので、座席数がそれほど多くありません。
ただ嬉しかったのは、同日公開の『STAR WARS』最新作に観客動員数で勝ち、カトマンズ最大級のシネコンであるゴピクリシュナホールでは、本作のバナーを中央に掲げ、同日公開の『STAR WARS』は左下隅だったことです。さらにいえば、有料チャンネルのテレビでも放映されました。ネパール人の心の中が垣間見え、興味深く感じたエピソードがあります。映画のなかで、主人公の建築家であるラメス・ラマ氏が日本留学時代の恩師の招きで来日した際、在日ネパール人に「日本に何のために来ているのか。もっと、しっかり勉強しなければだめではないか」と説教を垂れる場面があります。
しかし、実はそのネパール人は立派な人間であることがわかり、後半でラマ氏は「ごめんなさい」と謝ります。そのコントラストをつけるために用意した「説教の場面」が現地の観客に反発どころか納得され、とても人気があったのです。このことは私もネパールの方とお付き合いして感じるのですが、素直で時々、自虐的ではないかと思う事さえあります。この点は、もしかしたら、一世代前の日本人と似ているのかも知れません。4月25日にネパール大地震3周年追悼上映会開催
――日本では4月公開と聞いています。わかっているスケジュールを教えていただけますか。
伊藤 日本では4月25日のネパール大地震3周年追悼上映会(於・中野ゼロホール)を皮切りに渋谷・ユーロライブほかにて全国一般公開やプレミアショー(千葉市、練馬区、港区、富山市など)を予定しています。渋谷ユーロライブでは、私の前2作の『カタプタリ~風の村の伝説~』と『シリスコフル(邦題「カトマンズに散る花」』についても同時上映を予定しています。
また、日本人だけでなく、在日ネパール人の方にもぜひ見ていただきたいので、映画館によっては、現地で公開したネパール語版の上映や日本語版にネパール語のテロップをいれることなども構想中です。ネパールは親日で日本語学習熱の高い国である
――最後に読者にメッセージをいただけますか。在日ネパール人の数は2012年から急増し、約67,470人(2016年12月末現在、法務省在留外国人統計)と言われています。2000年末の3,649人と比べ、およそ18倍です。両国の絆は、ますます重要になってきます。
伊藤 今、すべての日本人は自らグローバル化していく必要に迫られています。ネパールのことを知らない人には、ぜひ映画館へ足を運んでいただきたいと思っています。そして、アジア随一といわれるぐらい親日で、日本語学習熱が高いネパールという国があることを、ぜひ知っていただきたいのです。
私はネパール映画を通じてですが、日本人とネパール人は、かなり親和性があると感じています。我々日本人が自然の山や海を見て「普通に」感じるのと同じものを、ネパール人も山や海を見て感じている気がしています。また、いい意味でも、悪い意味でも、日本人は「イエス」と「ノー」をはっきりさせず、その曖昧な感覚を大事にしますが、実はネパール人にもそれを感じます。日本と親和性の高いネパール女性の介護実習生
この映画の場面(オチ)の1つにネパール人女性が介護の研修実習生として来日、日本に定着するというのがあります。少子高齢化していく日本の将来、とりわけ介護などの問題の解決には、アジア諸国からのサポートを必要とします。その対象国に、ベトナムやインドネシアなどさまざまな国が挙がりました。しかし、遅々として進んではいません。そこには、よくいわれる語学の壁や、宗教、文化の違いとは別に、もっと根っこの部分の親和性が欠けているのではないかとも思えます。そこで、日本と親和性の高いネパールの女性の介護を提案してみたわけです。
(了)
【金木 亮憲】<プロフィール>
伊藤 敏朗(いとう・としあき)
1957年大分市生まれ。現・東京情報大学総合情報学部教授(18年4月より、目白大学メディア学部特任教授に就任予定)日本大学大学院芸術学研究科博士後期課程修了・博士(芸術学)ネパール映画監督協会に所属する唯一の外国人監督で、ネパール映画の第1人者。
『カタプタリ~風の村の伝説~』(中編劇映画、2007年)でネパール政府国家映画賞を受賞。ネパール文学最高峰の文芸大作『シリスコフル(邦題「カトマンズに散る花」)』(2013年)で、ネパールデジタル映画祭批評家賞、ネパール政府国家映画撮影賞を受賞。著書は『ネパール映画の全貌‐その歴史と分析』(2011年、凱風社)など。関連記事
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