2024年11月17日( 日 )

「スマートデイズ」が民事再生法申請

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 女性向けのシェアハウスを運営する東京の不動産会社スマートデイズは、自力での事業継続を断念し9日、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請し、受理されたと発表した。

1.民事再生法申請した理由について

 スマートデイズは2014年4月から、30年間賃料を保証するサブリース契約で女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開。物件数は約800棟/1万室に上るが、ほとんどの案件で融資を引き受けていたスルガ銀行が昨年10月に方針を転換。オーナーへの融資を打ち切ったことで、同年10月末からオーナーへの賃料支払いを一部減額。そのため新規のシェアハウスの販売が悪化し、入居者が集まらなくなったため、今年に入っておよそ700人のオーナーへの賃料の支払いが相次いでストップする状況になり、その動静が注目されていた。

◆同社によると、シェアハウスの電気や水道などは電力会社などと契約して料金を支払うことになっており、資金繰りの悪化によって、入居者の生活インフラが止められる恐れが出てきたからだという。

2.スルガ銀行~「かぼちゃの馬車」への融資を再検証する

 NetIB-Newsでは3月12日から3回にわたり、『スルガ銀行~「かぼちゃの馬車」への融資を検証する』を掲載。今回スマートデイズが民事再生法を申請し、シェアハウスが社会問題化したことから再度、融資を実行していたスルガ銀行を再検証していくことにした。【表1】を見ていただきたい。スルガ銀行の貸出金推移表である。

この表から見えるもの

◆スマートデイズの設立は2012年。スルガ銀行の13/3月期における消費者ローンの残高は2兆3,273億円で、総貸出金に占める比率は84.5%。住宅ローンは1兆9,236億円(比率69.8%)。シェアハウスなどのオーナーに対する融資となる「その他ローン」4,036億円(比率14.6%)の3計数は基礎数字となる。
 同社が本格的に活動を始めた14/3月期の「その他ローン」は前期比+1,105億円の5,141億円となり、一気に5,000億円台に乗せている。また15/3月期は前期比+1,399億円の6,540億円と大幅な増加となっている。

◆17年10月になってシェアハウスのオーナーに対する融資を中止したが、17/9月期の「その他
ローン」の残高は9,083億円(前期比+860億円)となっており、13/3月期と比較すると倍以上の+5,047億円増加しているのがわかる。

◆13/3月期の住宅ローン残高は1兆9,236億円に対し、17/9月期の残高は2兆551億円で増加額は1,315億円しか増えていない。変動金利で利ザヤが薄い住宅ローンより、金利が高い「その他ローン」に全行挙げて取り組んでいたことが読み取れる。

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3.静岡県の他行地銀3行との計数比較表について

◆【表2】を見ていただきたい。静岡県には地銀が4行ある。
・17/3月期の当期純利益トップはスルガ銀行で、以下、静岡銀行、清水銀行、静岡中央銀行となっている。「その他ローン」の収益が大きく貢献したことがわかる。18/3月期(予想)では、シェアハウスのオーナーへの融資を中止したことが影響したのだろうか。トップは静岡銀行、スルガ銀行、静岡中央銀行、清水銀行の順になる。

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まとめ

◆【表3】の一般貸出金を見ていただきたい。17/9月期の企業融資残高表である。

・静岡銀行の一般貸出金の比率は62.8%、清水銀行は69.0%、静岡中央銀行は69.1%。

・一方スルガ銀行の13/3月期の一般貸出金は4,280億円だったが、17/9月期は▲1,054億円の3,226億円となり、その比率は9.8%しかない。これらの数字から見る限りスルガ銀行は地方銀行ではなく、消費者金融会社といえる計数だ。

・金融庁は銀行法に基づく「報告徴求命令」を出し、融資の実態解明を進めているといわれるが、 融資を実行したスルガ銀行は、「(スマートデイズとは)提携関係にないのでコメントできる立場ではありません」としている。
 しかしスルガ銀行の「その他ローン」の推移表を見ると、スマートデイズとの親密な関係が読み取れる。オーナーを紹介する同社に対する審査能力の欠如も問われているし、株価が昨年比で大きく下落していることから見ても、その責任は大きいといえるのではないだろうか。

【表3】静岡県地銀(4行)の預貸金内訳について

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【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

<COMPANY INFORMATION>
(株)スマートデイズ

設 立:2012年8月2日
旧社名:スマートハウス(17/10月変更)
所在地:東京都中央区銀座1-7-10
代表者:赤間 健太
資本金:11億20万円

 

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