セカンドレイプを犯した財務省顧問弁護士の謎(前)
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青沼隆郎の法律講座 第5回
エリート中のエリート
筆者の東大法学部クラスメイトで弁護士になったのは2名だけである。1名は多浪であったため、最初から公務員試験を断念していたし、もう1名は大学紛争に力が入りすぎたため、やむなく弁護士になった。大多数のクラスメイトは公務員試験を受け官僚になるか、大企業に就職した。
そのころの風潮は、わざわざ東大法学部に入学して弁護士を目指すのは志が小さいとされていた。それは弁護士の業務そのものが、所詮、金銭争いの応援(民事事件)か、犯罪者の擁護(刑事事件)だからという認識があったからである。
弁護士になるより、弁護士を使う側になればとの意見もあった。つまり、弁護士の地位は世間の人が憧れ尊敬するほどには高く評価されていなかった。事実、在学中に司法試験に合格しても、官僚やメガバンクの行員に就職する者が少なくはなかった。
そんな東大法学部出身者のなかでも自他ともにエリートと認める財務省がなんと税金を使って特定の民間業者である法律事務所と顧問契約を結んでいるというのだから心底驚いた。実際に弁護士を金(税金)で使う側に立っていたからである。
日本の本当の法律の専門家は、それぞれの省庁の公務員である。エリート裁判官で現在は大学教授となっている瀬木比呂志氏の著書には、2回試験(司法試験と司法修習生の卒業試験)の成績の半分以下の下位成績の者が弁護士であるという。
つまり、成績上位の者は裁判官や検察官や官僚になるという。この弁護士下位史観は明治時代の三百代言時代以来の法曹界の常識である。そして、高等文官の試験以来、司法官より行政官が上位であり(裁判所は司法省の下部組織)、その伝統のなかにある日本の官僚制で、その頂点に君臨するのが財務省だ。
その頂点が、一体何の目的で民間弁護士と顧問契約を結んでいたのか。
まず、弁護士事務所の選択の問題がある。金額はさほどではないだろうから随意契約であり競争入札ではないだろうが、選定における中立公正性の担保は何もない。そもそも、何を委託・委任するのかという重大な問題がある。
財務省が顧問弁護士を雇うことの問題性は、福田淳一財務次官のセクハラ問題で、その被害女性に名乗り出ることを求めた顧問弁護士事務所の体たらくで証明された。
(つづく)
【青沼 隆郎】<プロフィール>
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)
福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める。関連記事
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