仮想通貨バブルの足跡~コインチェックは流出分580億円分を荒稼ぎしていた(後)
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NEMの価格は1年間に190倍に暴騰
17年の仮想通貨の価格高騰はクレイジーというしかなかった。代表的な仮想通貨であるビットコインの価格(円ベース)は、2017年1月5日は11万円だった。11月26日には100万円を突破、12月8日には200万円を超えた。100万円を突破してから、わずか12日に倍になった。17年の1年間に18倍に暴騰。16年初めは4万円台で推移していたから、2年間で50倍だ。
仮想通貨の交換業者は「取引所」と「販売所」の2種類の取引を手がける。交換業者が自ら仮想通貨をいったん保有したうえで売りさばく「販売所」の場合は、業者の仕入れ値と売値の差額である利ザヤが往復で10%前後にも達するとされる。
コインチェックは13種類の仮想通貨を扱っている。このうち1年間に価格が最も上昇したのは、流出したネム(NEM)の190倍、次にリスクの127倍、リップルの125倍。仮想通貨の代表銘柄であるビットコインの上昇率の比ではない。まさに爆騰である。
昨年初めにネムを10万円で購入していれば、年末には190倍の1,900万円になる。投機銘柄ゆえにハッカーに狙われた。
13の仮想通貨を扱うコインチェックは、価格の暴騰による売買の利ザヤで「濡れ手で粟」の暴利を貪ったのである。
金融庁が油を注いだ仮想通貨バブル
仮想通貨バブルを巻き起こした元凶は金融庁である。17年4月に改正資金決済法を施行。世界に先駈けて仮想通貨交換業者に登録制を導入した。「新しい金融の潮流を育てる」という森信親長官の方針を受け、17年8月から仮想通貨登録業者の登録審査に乗り出した。これがバブルの炎に油を注ぐことになる。
いち早く仮想通貨バブルが起きた中国では、すでに国内の仮想通貨取引事業を禁止。海外での取引でも利用を禁止する方針だ。日本に押し付けて、中国は一抜けしたわけだ。イギリスの大手ロイズ銀行グループは、顧客が巨額の債務を抱えることを懸念して、顧客がクレジットカードで仮想通貨を購入することを禁止した。
世界が仮想通貨はヤバイと思い始めていたなかで、日本だけが登録制にして仮想通貨に政府公認というお墨付きを与えた。これが空前絶後のバブルを引き起こした。
コインチェックは「みなし」業者にもかかわらず、テレビCMを流すなど大々的に宣伝を展開し、客を集めた。法施行以前から展開していた業者は金融庁に登録を申請すれば、営業を継続できるという「みなし規定」に基づくものだ。
一攫千金の野望に燃えて登録業者を目指す企業は100社を超えた。これら仮想通貨取引業者が一斉に客集めに走る。仮想通貨価格が暴騰するのは、17年11月と12月の2カ月の間だ。ビットコインがわずか12日に価格が倍になったあの時期だ。
仮想通貨の値上がり益を狙い、日本では18年3月時点で延べ350万人が仮想通貨取引に参加した。ビットコインなど主要な5つの仮想通貨の取引額は17年度が合計で69兆円と、16年度比で20倍に拡大したという。
次は、どうなる。価格が元の10万台に下落して、仮想通貨バブルは終わる。そこで一句。「夏草や兵どもが夢の跡」(芭蕉)。
(了)
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