昨今M&A事情(1)~日本ペイント、シンガポールの会社に乗っ取られる(前)
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国内塗料トップ、世界4位の日本ペイントホールディングス(HD)が米国の塗料大手アクサルタ(世界6位)の1兆円買収を仕掛けたものの断念に追い込まれた。一転、日本ペイントHDはシンガポールの塗料大手、ウットラムグループに乗っ取られた。3月28日に大阪市で開いた定時株主総会で城を明け渡したのだ。
ウットラム推奨の取締役が6人と過半数を占める
日本ペイントHDは3月29日、臨時報告書を開示し、株主総会における議案の賛否を明らかにした。第2号議案の取締役10人選任の件の結果は次の通り。
新体制は、筆頭株主のシンガポールの塗料大手ウットラムのトップ、ゴー・ハップジン氏が会長に就き、同社が推した6人が取締役の過半を占めた。日本ペイントは、ウットラムに乗っ取られたのである。
ゴー氏は1月19日、メディアを通じて自分を含む取締役6人の選任を求める株主提案を出したことを公表した。日本ペイントに激震が走る。
ウットラムは日本ペイントの半世紀を超える合弁パートナーであると同時に、日本ペイント株式の39.6%(議決権ベース)を保有する筆頭株主だ。ゴー氏は、これまでにも日本ペイントの買収を仕掛けてきたが白紙に戻した。今回、ゴー氏は悲願としてきた日本ペイント乗っ取りに勝負を賭けたのである。乗っ取るための大義名分が転がり込んできたからだ。
米塗料大手アクサルタの1兆円買収計画
日本ペイントHDは17年11月22日、米塗料大手、アクサルタ・コーティング・システムズ(世界6位)に買収や経営統合の提案をしたと発表した。アクサルタには、世界トップのアクゾ・ノーベル(オランダ)が10月に合併を提案し、株式時価総額は1兆円を超えていた。 アクサルタは、アクゾと日本ペイントに両天秤をかけていたが、日本ペイントに絞り込んだ。
日本ペイントHDによるアクサルタの買収が報じられると、日本ペイントHDの株価は急落した。完全子会社にするには1兆円の借入金が必要だ。1兆円で買収すると、日本ペイントHDの有利子負債は1兆4,000億円を超える。財務内容を懸念して株価が下落した。
結局、日本ペイントHDは12月1日、アクサルタの買収断念に追い込まれた。常識外れのM&Aは、日本ペイントHDに買収される恐怖と見られた。日本ペイントHDは、筆頭株主であるウットラムによる乗っ取りのリスクにさらされていた。そこで、買収防衛策として、巨額の負債を負う焦土作戦を採った。巨額な負債を返済するために増資を行ない、ウットラムの持ち株比率を落とすことを狙ったのではないか、というわけだ。
ウットラムは買収に対して、増資で1株あたりの利益が減るとして猛反発。取締役会が経営を監督する場として機能していないとして社外取締役の選任を求める株主提案をした。日本ペイントHDを乗っ取る絶好のチャンスと判断したのである。
日本ぺイントとウットラムは10年以上に渡り暗闘を繰り広げてきた。
(つづく)
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