2024年12月19日( 木 )

スルガ銀行危機管理委員会による調査結果を読む~通帳偽造・改ざん、二重契約の手口全公開(後)

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行員は二重契約や自己資金偽装を認識していた

 スルガ銀行は融資を行う際には自己資金1割という内部基準を設けていた。スマートデイズは、「自己資金ゼロ」を謳い文句に「かぼちゃの馬車」のオーナーを募っていた。
 営業担当者はこう供述している。

〈(かぼちゃの馬車の件について)自己資金ゼロで、という宣伝がなされていることは知っている。当社の自己資金1割という方針とは合わない。客がどのように得心しているかについては、スルガ銀行のほぼ全社員は、客の提出した売買契約書、自己資金確認書があるので、業者が何かやっているとしても「それはそれ、これはこれ」と思ってしまっている所があると思う。ある種の割り切りである。スルガ銀行の社員は、客との間で、売買金額がいくら、スルガは(販売価格の)90パーセント(までの融資)なので融資額はいくらですね、はい、というやり取りをして、売買契約書に割り印がされ印紙が貼付された原本を受領すれば、それ以上つっこんでいない。〉

 営業担当者は、販売会社から「銀行用」と「実際」の2通りの試算を記載したファイルをメールで受領していた。それらのファイルで「銀行用」と記載されていた金額での契約書が顧客から提出されて融資が実行された。従って、「この営業担当者については、二重契約と自己資金の偽装について認識があったと認められる(当該営業担当者は当委員会のヒアリングにおいて当該ファィルについては「記憶にない」と述べているが信用できない)」と調査報告書は書く。

チャネル営業と高金利のフリーローンのセット販売

 スルガ銀行は、シェアハウス案件に対する融資に当たって「チャネル営業」という手法(スマートデイズやその関連の販売会社といった「チャネル」が個人投資家を紹介する手法)を活用してきた。
 横浜東口支店では、支店長のイニシアチブで、営業担当者とチャネルが一体となりフリーローンを「融資の条件」とするセット販売が行われていた。顧客は3.5%で融資を受けたが、金利7.5%のフリーローン契約も同時に迫られた。

 ノルマに追われた営業担当者には、高利の無担保ローンを抱き合わせるのは、当たり前の営業手法だった。新規融資の目標額が1カ月ごと設置され、達成度合いがボーナスや出世に響いた。未達の行員は、営業部門から外された。行内では増益へのプレッシャーが強く、不正を認識しても、融資が実行された。審査部門の歯止めが利かず、営業幹部が審査担当を恫喝した事例もあった。

 シェアハウス投資とは何だったのか。スマートデイズと販売業者は、スルガ銀行から融資を引き出すために自己資金の残高を証明する通帳を偽造・改ざんした。スルガ銀行が自己資金を1割求めていることは顧客も理解しており、変更契約は顧客自らが締結しているので、この手口は顧客も認識のうえで行われていたものと考えられる。

 相当数の行員は不正を認識していたが、顧客にも弱みがあるから、高金利の無担保ローンを抱きあわせて販売し、利益を稼ぐチャンスと捉えた。シェアハウス融資は三者が混然一体となって繰り広げた狐と狸の化かし合いであった。

(了)
【森村 和男】

 
(前)

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