昨今M&A事情(2)~富士フイルムHD、タダより高いものはない。米ゼロックスの買収は白紙に(前)
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富士フイルムホールディングス(HD)による米ゼロックスの買収計画が白紙になった。「現金流出はない」と大見得を切った買収劇だったが、米ゼロックスの大株主たちが「タダで経営権を握る詐欺的スキームだ」と猛反発。二転三転した挙げ句、米ゼロックスから婚約解消を告げられた。ことわざでいうところの「タダより高いものはない」だ。
米ゼロックスのCEOが大株主派に交代
米ゼロックスは5月13日、富士フイルムHDによる買収合意を解消すると発表した。米ゼロックスは、富士フイルムHDの買収計画に反対している筆頭株主のカール・アイカーン氏と第3位の株主、ダーウィン・ディーソン氏と改めて和解。和解の一環として、富士フイルムHDと買収交渉を進めたジェフ・ジェイコブソン最高経営責任者(CEO)ら6人が取締役を辞任。代わりに、大株主側が推す新CEO候補のジョン・ビセンティン氏ら5人が取締役に指名された。
米国発の報道によると、アイカーン氏は「支配権を富士フイルムに渡す軽率なスキーム(枠組み)を破棄したのは、極めて喜ばしい」と勝利宣言している。
混迷を深めた買収劇は、白紙に戻ることになった。富士フイルムはホワイトナイトとして参戦
ホワイトナイト(白馬の騎士)――。富士フイルムHDが、米ゼロックスの買収に乗り出したそもそものきっかけだ。ホワイトナイトとは、敵対的買収を仕掛けられた企業側に立つ支援者のこと。
米ゼロックスのジェイコブソンCEOは、“物いう”株主による圧力で窮地に立たされていた。米著名投資家のカール・アイカーン氏は、欧米の需要不振で収益の減少が止まらず株価も低迷する米ゼロックスへの対決姿勢を強めた。
アイカーン氏ら大株主らは、ジェイコブソン氏の解任と、ニュージーランドや豪州で不正会計(売上の水増し)を起こした富士ゼロックスとの合弁見直しを要求した。
アイカーン氏に対抗するため、ジェイコブソン氏は、富士フイルムHDの古森重隆会長兼CEOに援軍を求めた。ジェイコブソン氏は米イースト・コダック出身で、古森氏は富士フイルム出身。ともに写真フイルム出とあってウマが合った。2人は1年半前から極秘の統合交渉を行ってきた。古森氏がホワイトナイトを決意したきっかけを、日本経済新聞電子版(18年2月1日付)はこう報じた。〈「キャッシュを使わない手法があります」。通常のTOB(株式公開買い付け)でゼロックスを買収すれば1兆円超の資金が必要。昨秋、資金流出を抑えられる提言を外部コンサルタントから受け、具体的な買収プロジェクトが動き出した。〉
ホワイトナイトといえども、多額の出費が必要。それがタダで買収できるというのだ。古森氏は、この買収スキームに飛びついた。
(つづく)
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