【特別寄稿】豊洲市場と同じ偽装・手抜き工事が行われたマンション
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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏
設計偽装の手口は豊洲市場と同じ
前回の記事で、東京豊洲市場の構造計算上の問題として「保有水平耐力計算におけるDs値(構造特性係数)の偽装」「柱脚の鉄量が必要鉄量の規定を満足していない」を取り上げたが、現在裁判が行われている福岡県久留米市の「新生マンション花畑西」でも、設計の瑕疵として指定され争点となっている(指摘された項目に対する被告の設計事務所からの反論は皆無)。
スーパーゼネコンによる驚くべき手抜き工事
同マンションでは、鹿島建設によるずさんな施工も大きな争点となっている。鹿島建設の施工瑕疵の1つとして、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さが建築基準法施行令第79条を満足していない状態が建物全体におよんでいるという瑕疵がある。この事実は、被告・鹿島建設の調査と原告・区分所有者側の調査により明らかになっている。
鹿島建設は改修を行ったと主張しているが、鉄筋のかぶり厚さは、依然として、建築基準法施行令に違反した状態が続いている。
鉄筋のかぶり厚さ不足の度合いは想像を絶する酷いレベルであり、鹿島建設が調査した時点では、数多くの鉄筋が躯体から露出し、コンクリートが爆裂を起こしていた。元請の鹿島建設が下請業者の栗木工務店(久留米市)に損害賠償を求めた訴訟(すでに和解)では、鹿島建設自身が下記のような瑕疵を指摘している。
「鉄筋のかぶり厚さが確保されていないので、コンクリート面が爆裂・落下」
「通常、請負者として求められる基本的注意義務を著しく欠いた工事であり 重過失に基づくもの」
「コンクリート破片が落下、重大な欠陥」
「極めてずさんな施工管理」
「建築基準法が定めた型枠の存置期間が守られていない」
「コンクリート打設の際、十分に締め固めていないため躯体内部に大きな空洞」
「コンクリートの中性化が通常の2倍以上進行」とくに、鉄筋のかぶり厚さに関しては、前述の通り、建築基準法施行令違反であり、法令違反状態が、局部的なものでなく、建物全体におよんでいる。鹿島建設は「補修済み」と主張しているが、共用部分と専有部分の一部の調査で判明した箇所の鉄筋に防錆処理を施しただけであり、施行令が定める鉄筋のかぶり厚さ(この場合3cm)を確保するような補修方法ではなかったので、現在も法令違反状態である。豊洲市場の例と同じく、法令違反の状態が、時間の経過とともに適法となることはない。それどころか、調査が行われていない箇所は、防錆処理すら施されていないので、鉄筋の腐食は加速度的に進行している可能性が高い。
鹿島建設のずさんな施工による瑕疵は、上記に示した、鹿島建設自らが認めた瑕疵もあるが、ほかの重大な瑕疵も判明している。それは、「図面に明記された梁が、全階30カ所も施工されていない」ことである。梁は、建物本体と外部避難階段を接続する非常に重要な役割をもっている。
外部避難階段は、中央の壁の両側に階段を配置している形式であり、建物本体と有効に接続されていなければ地震の際の揺れを抑えることが難しい構造である。その接続部分の梁を施工していないのだから、構造上の大きな欠陥である。また、図面通りの施工が行われていないということは、重大な契約違反であり、建設業法に抵触する可能性が高い。
建設業法第28条には、「建設業者が建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき、又は危害を及ぼすおそれが大であるとき、不誠実な行為をした場合、営業の全部又は一部の停止を命じることができる」と明記されている。
億ションの施工ミスには素早く対応
鹿島建設は、東京 南青山の超高級マンションにおいて、地中梁の鉄筋を切断した箇所があることが発覚したケースでは、すぐに施工の瑕疵を認め、マンションを建て替えることを決定した。マンションの購入者が高所得者ゆえのスピーディーな対応だったのか?方や、久留米市の一般的な価格帯のマンションでは、鹿島建設自らが施工瑕疵を認め下請業者に損害賠償を請求した事実がありながら、図面通りに施工していないことに対して開き直った対応を貫いている。マンション全階での30カ所もの手抜き工事は、意図的に行われたとみて間違いなく、詐欺行為にほかならない。
鹿島建設は、リニア新幹線の談合により幹部が逮捕された。東京都など各自治体から指名停止処分を受けており、品川泉岳寺の再開発事業においても事業協力者に決定していながら除外された。
鹿島建設の前年度決算では巨額の利益を上げており、今後続くオリンピック関連施設の工事、震災復興工事、東京を中心に進んでいる再開発などが目白押しである。羽田空港跡地でも鹿島建設を中心にして12万m2の複合施設が開発される。リニア新幹線の談合・会社幹部逮捕によるダメージを差し引いても、恐らく新年度以降も巨額の利益を上げることは間違いないだろう。
しかし、巨大企業である鹿島建設の莫大な利益の影には、ずさんな施工に泣かされている92戸・250名のマンション住民が存在しており、いつ発生するか予測できない大地震の恐怖と闘う日々を過ごし続けなければならないのである。
まずは、謝罪からスタートさせるべき
全階で30カ所もの梁を施工していないという手抜き工事は、直接的にはマンションの建築主との間の契約違反である。しかし、マンションを購入した区分所有者は、図面通りに施工をされていない(意図的な手抜き工事)欠陥マンションを、数千万円で購入したのである。
全階30カ所も図面通りに梁を施工していない手抜き工事にしても、建物全体において鉄筋のかぶり厚が法令違反となっている瑕疵についても、本来は、まず謝罪をし、そこからスタートすべきである。
しかし、鹿島建設は謝罪するどころか、「それがどうした」と完全に開き直っている。
裁判においては、裁判官から求められた資料の提出を4度も不当に延期し、挙句に、的外れな資料を提出するなど、原告のマンション区分所有者を愚弄しているのみならず、裁判所さえも侮辱している。鹿島建設ほどの巨大企業になれば、裁判所すら見下してしまうのであろうか。考えてみれば、リニア新幹線の談合に関しても、操作に積極的に協力した大林組に較べ、鹿島建設は捜査当局を見下し、操作に協力しなかったため、会社幹部が逮捕される事態に至ったのではないか。
このような巨大企業の驕りを許せないのは私1人だけではないと思う。同感される方、また、反対意見のある方も、「記事へのご意見はこちら」からご意見をお寄せいただきたい。関連記事
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