昨今M&A事情(4)~熊谷組が住友林業にのみ込まれた!(後)
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住宅メーカーがゼネコンを次々と買収
国土交通省がまとめた2017年度(17年4~18年3月)の新設住宅着工戸数は、前年度に比べて2.8%減の94万戸。新設住宅着工戸数は1972年度の186万戸から半減したことになる。今後も少子化が進み、さらに新設住宅着工戸数が減ることが予想される。野村総合研究所の推測によると、新設住宅着工戸数は、20年度に74万戸、25年度に66万戸、30年度に55万戸に減少していくとしている。
住宅メーカーは、新設住宅着工件数の減少を踏まえ、中・大規模建築の受注に力を入れる。ゼネコンが手がけていた受注額が大きい案件だ。ゼネコンの領域に進出すべく、住宅メーカーによるゼネコンの買収・提携が進んだ。
口火を切ったのは大和ハウス工業。いち早く“脱戸建住宅”に経営の舵を切った。総合生活産業を標榜し、マンション・賃貸・商業・事業施設へと展開する。07年、小田急電鉄傘下だった小田急建設(後に大和小田急建設)に資本参加。13年には準大手ゼネコンのフジタを約500億円で買収。この2社を15年10月に合併させて完全子会社に組み入れた。13年にはマンションのコスモスイニシア(旧・リクルートコスモス)に63.1%出資して子会社にした。
積水ハウスは16年1月、準大手ゼネコン、鴻池組の親会社鳳ホールディングスに33.3%出資した。積水ハウスがゼネコンを傘下に収めるのは初めてのことだ。
16年5月には、旭化成の住宅事業会社の旭化成ホームズも、中堅ゼネコンの森組に30.2%出資して筆頭株主になった。ミサワホームは今年5月8日、中堅ゼネコンの大末建設と資本業務提携。ミサワは大末の14.03%の株式をもつ。ミサワはトヨタホームが51.0%を出資する筆頭株主で、トヨタグループに組み込まれた。
ゼネコンと住宅メーカーの危機感格差
ゼネコンは江戸、明治に創業した老舗が多く、鉄道、道路、ダム、橋梁など社会インフラを担ってきたという自負が強く、住宅メーカーを「プレハブ屋」と見下していた。だが、力関係は変わった。ゼネコンは住宅メーカーの草刈場になった。
大和ハウスの18年3月期の売上高は3兆7,959億円。ゼネコントップの大林組(1兆9,006億円)の約2倍だ。大和ハウスが買収したフジタのそれは4,306億円。前田建設工業(4,677億円)、戸田建設(4,290億円)に匹敵する。住友林業の売上高は1兆2,219億円。これに対して熊谷組は3,740億円。売上規模は3.3倍の開きがある。
これほどの格差が生じたのは、公共工事でそこそこ食って生けるゼネコンと、住宅では食っていけない住宅メーカーの危機感の差である。今後も、住宅メーカーによるゼネコンのM&Aは続く。
(了)
【森村 和男】法人名
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