自社の存在価値は「地域貢献」にあり 高い利益還元意識も変わる事業環境(中)
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(株)ふくや
現社長の力量と気質を示す経歴と取り組み
17年4月、俊夫氏の孫・武浩氏(健氏の長男)が代表に就任した。父や叔父がつないだ「貢献意識」と「収益を上げる力」を推し量るうえで、参考にしたいのがプロサッカークラブ・アビスパ福岡への支援と福岡サンパレスの再建だ。
武浩氏が10年から非常勤取締役を務めるアビスパ福岡は13年に極度の経営不振に陥った。それまで7社会メンバーや株主からはたびたび支援を受けた経緯があり、こうした企業から追加支援が期待できない状況に陥った。当時ふくや統括部長だった武浩氏は社長・正孝氏に支援商品販売を提案し実現する。売上目標は500万円。ふくやの不動産に多額の担保設定を成されてから5年しか経っておらず、資金繰りに余裕はなかったはずだが、利益だけでなく全売上金を寄付する方針を打ち出した。成果は目標を大きく上回る1,776万円。チームの公式スポンサーは現在も継続している。
武浩氏は福岡サンパレスにも出向して社長を務めた。福岡サンパレスはもともと(財)福岡勤労者福祉センターが管理・運営し、福岡市からの補助金で成り立っていた。04年にふくやが運営会社を設立して引き受けている。06年に武浩氏が出向し社長に就任し、09年から会長を務め、昨年、監査役に就任した。武浩氏は福岡サンパレスホテル&ホールに名称変更。福岡市民にすら認知度が低かった宿泊施設を打ち出した。アビスパ福岡との縁を活用した。オフィシャルスポンサーとしてメニューの共同開発を行い、単価の引き上げを行った。また、07年1月有能なパティシエが在籍することを活用しスイーツ店「パティスリーウフ」を中洲のグループ所有不動産に出店する。立地を意識した営業戦略で営業時間は午後5時から。「ロールケーキ」はとくに人気を博し中洲エリアで働く女性を中心にブランドを確立した。2期目で黒字化をはたし10億円に満たなかった売上は後に11億円を突破した。
劇団主催の経歴やふくやブランドが経営者としての力量を見えにくくしているが、覚悟と収益では実績を残している。また、「センス、見識は社内随一」との声があるようにふくやでの取り組みでも存在感を示している。贈答品市場の主力ユーザーの高齢化が加速し、市場が縮小するなか業界の対応は急務となっている。売上高約150億円を計上し、トップを奪い返した同社だが、そのうち約40億円は業務用卸と見られる。トップ企業とて安閑とはしていられない。他社の取り組みも明確になってきた。やまやコミュニケーションズの飲食強化や山口油屋福太郎の「めんべい」、かねふくの「めんたいパーク」など本格的な取り組みを開始している。
ふくやは主力商品のブランド力が高いだけに安易な多角化でイメージ低下を避けたいが、同社はチューブ入り明太子の「tubu tube(ツブチューブ)」や明太子とマグロ肉を缶詰にした「めんツナかんかん」を市場投入しヒットを飛ばしている。また、ブランド力の若返り策も打ち出している。俊夫氏による製法公開の経緯や草分けとしてのブランド力を知らない世代が増えているなか、俊夫氏をモチーフとした映像作品「めんたいぴりり」への協賛を行った。地元で絶大な人気を誇る博多華丸の起用もあり、評価は上々で19年公開予定で映画製作も進んでいる。同社をモチーフとしたバラエティーや情報番組もこのところ立て続けに発信されている。
(つづく)
【鹿島 譲二】<COMPANY INFORMATION>
代 表:川原 武浩
所在地:福岡市博多区中洲2-6-10
登記上:福岡市中央区天神3-3-3
創 業:1948年10月
設 立:1980年8月
資本金:3,000万円
売上高:(17/3)148億円関連記事
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