「設置ゼロ」の長崎市で小中学校エアコン設置論争~「暑さに耐えることも教育」
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九州ワーストの設置率1桁台
全国各地で記録的な猛暑が続くなか、長崎市で大きな議論となっているのは、小中学校の普通教室へのエアコンの設置。設置率の全国平均が49.6%であるのに対し、長崎県の平均は8.6%。そのうち長崎市は、小学校が4.0%、中学校では1.7%という、全国ワーストクラスの状況である。
文科省の調査によると、2017年4月1日現在、小中学校普通教室のエアコン設置率は、トップが東京都の99.9%。九州では、沖縄県79.6%で最も高く、長崎県のみが唯一1桁台でワースト(表参照)。設置率1桁台は北海道・東北に多く、南国・九州の長崎県が群を抜いて低いのだ。
ここまで低いのには、やはりワケがあった。設置にかかる費用、すなわちお金の問題ではない。長崎市の教育委員会が「暑さに耐えることも教育」との姿勢を固持しているのである。
「エアコンの設置については費用の問題ではなく、季節にともなう自然の変化のなかで、暑さや寒さを感じ、体内の環境を一定に保つ適応能力を高めることが必要」(市教育長2月議会答弁より)
学校のすべての部屋にエアコンがないわけではない。特別支援学級の教室のほか、学業に集中するための図書室など特別教室、万が一体調不良となった場合の保健室、監督する大人たちのための職員室にはエアコンを設置。教室はあくまで身体を鍛える修練の場というのが、長崎市教育委員会の教育方針。そのため、市内小中学校の普通教室へのエアコン設置は論外。前出の『小学校4.0%、中学校1.7%』という数値にも普通教室は含まれていない。
長崎市議会では、何人もの市議が、市民を代表してエアコン設置の要望を伝えてきた。市側は、壁掛け式扇風機を今年6月までに全教室に設置するほか、5月に温度・湿度を計測する熱中症計を全教室分配布し、「詳細な調査を実施したうえで、エアコンの設置について判断」(市教育長)するとしている。今年中のエアコン設置は絶望的だ。
今年4月、文科省が学校環境衛生基準を一部改正し、教室内の温度で望ましいとされる基準は、「10℃以上30℃以下」から「17℃以上28℃以下」となった。これを受けて、長崎県内の他の自治体ではエアコン設置を前向きに検討するところも出てきている。「暑さだけでなく、最低温度が上がっている点も考慮して、エアコンの設置を検討すべき」との指摘もある。
7月17日、愛知県豊田市の小学校で小1児童が熱中症で死亡する悲劇が起きた。「平和のまちという長崎が、子どもたちに冷酷なまちであってはならない」(40代男性)。長崎市の親たちは、危機感から声をあげている。
【山下 康太】
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