【特別寄稿】豊洲市場訴訟で表面化する政商・日建設計の闇(前)
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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏
疑問や反対の声がいまだ根強く残る東京中央卸売市場の移転問題。新たに建設された豊洲市場は、建物の設計に関し、市場関係者から機能性の問題が指摘されているだけではなく、既報の通り、水産仲卸売場棟の建築基準法違反への疑問が浮上し、ついには訴訟にまで発展した。東京都・小池都政は、市井の疑問の声に向き合わず、今年10月11日に移転を強行してしまうのか。この建物の設計上の問題を指摘した(協)建築構造調査機構の仲盛昭二代表理事は、建築構造設計の専門家および長年、建築設計業界に携わってきた経験から、この訴訟について以下のように語っている。
仮の使用禁止は必須
東京都・豊洲市場の水産仲卸売場棟の設計における建築基準法令の規定に関する違反について、築地市場の仲卸業者の代表が6月29日、建築基準法令違反の是正(除却)を求める訴訟を提訴、7月9日には、仮の使用禁止の義務付けを要請する申立を行った。豊洲市場の設計を受託していたのは、国内最大手の設計事務所である日建設計である。
日建設計による建築基準法令違反は紛れもない事実であり、早い段階で、仮の使用禁止命令が決定されることに期待したい。そうでなければ、10月11日に法令違反の建物への移転が実施され、600社近い仲卸業者と従業員が、法令違反の建物での就業を余儀なくされるという異常状態となる。
しかも、東京都は、移転当日に移転元の築地市場の解体を始めるとしており、移転後、法令違反が認定され、建物が使用禁止となれば取り返しのつかない状況となる。このため、法令違反の有無が確定するまで、水産仲卸売場棟を仮の使用禁止とすることは必須だ。
東京都が反論をするとすれば、法的問題には触れずに、「建物の安全性」という技術的問題に特化した反論しか考えられない。しかし、原告の訴えは、建築基準法令違反を問題としており、安全性を問うたものではない。「安全性」の議論は主観論となるので、裁判所は行政寄りの判断を下す例も多いが、設計の違法性が論点であり、仮の使用禁止の決定は早いと考える。
東京都が、建築基準法令に違反した建物への移転を主導することは、法的に認められるものではない。移転自体への賛否に関係なく、建築基準法令違反の建築物に対しては、行政が是正を指示または要請するよう建築基準法に定められている。
仲卸業者で構成される東京魚市場卸協同組合(東卸)は、組合として豊洲への移転を了承しているが、法的には、個々の仲卸業者の意思により個別に決定すべきであり、営業権をもつ業者としての交渉権や発言権を行使するため、6月21日、仲卸業者の有志は『築地市場営業権組合』を結成した。営業権組合への賛同者は100名を超え、現在も参加者が急増を続けている。
築地市場関係者の提訴や営業権組合の結成・組合賛同者の急増を、ほとんどのマスコミが報じていないのはなぜか。事が重大過ぎて報道できないのであろう。東京都庁記者クラブに加盟している報道各社は、東京都との関係を壊すような報道は避けなければならない事情があるのではないか。日建設計の建築基準法令違反の設計を記事にすることは、日建設計と“深い関係”にある東京都の意に反することになる。
(つづく)
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