【豊洲市場訴訟】被告・東京都の反論への反論(5・終)~日建設計の「闇」
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10月11日に東京都中央卸売市場の移転・開場を予定している豊洲市場。しかし、移転元の築地市場の仲卸業者らが6月29日、東京都を相手取り、同市場・水産仲卸売場棟の建築基準法令違反の是正(除却)を求めて提訴。7月9日、この建物の仮の使用禁止の義務付けを要請する申立が行われた。ついに訴訟に発展した市場移転問題。被告・東京都の反論について、この問題の争点である建築基準法令違反を指摘した(協)建築構造調査機構の仲盛昭二代表理事に解説を依頼した。
――要約すると、日建設計は、豊洲市場・水産仲卸売場棟1階に非埋め込み型柱脚を採用し、構造特性係数(Ds)をRC造の係数(割増した数)で構造計算すべきところを行わなかった。さらに、市場問題PTで、その点に関する説明資料には、関係のない鉄骨造のデータをもち出して正当性を主張した。東京都もそれを認め、裁判に同資料を提出したということになる。
仲盛昭二代表理事 水産仲卸売場棟は、柱はSRC造、梁は鉄骨造という組み合わせになっています。主体構造がどちらであるかは、確認申請書および確認済証に記載された構造であるべきですので、本件建物の主体構造はSRC造が正しいということになります。構造計算を進める過程で、鉄骨造かSRC造か、いいとこ取りで計算を行うことは、建築構造技術者として言語道断な行為です。仮に、構造主体は鉄骨造のほうが正しいと、相手方や日建設計が主張するのであれば、ハイベースのカタログに「H形柱の場合はDsの割増が必要」という記載との整合性が取れません。
SRC造に鉄骨造の柱脚製品のDsのことを当てはめることは、明らかなごまかしです。この虚偽の説明は、鉄骨造用ハイベースの緩和条件がSRC造にも適用されると錯覚させることを目的としています。これを狙って、意図的に錯覚させる資料を作成し、日建設計はPTに提出し、東京都は裁判所に、平然と虚偽の資料を提出しているのです。このような悪質な行為は決して許されるのもではありません。
まったく別物の製品の緩和規定を他の製品に当てはめて虚偽の説明を行うことは、自動車にたとえた場合、ディーラーの営業マンが、同じトヨタというメーカーの車だからといって、プリウスの説明をするのに、クラウンのカタログを見せながら説明することと同様です。
このような間違いは、意図的でなければあり得ません。同じように、建築設計のプロである日建設計や特定行政庁である東京都が、このような恥知らずの説明を平然と行っているのは、何らかの意図をもっているとしか考えられません。
東京都が、裁判所に虚偽の証拠を提出したことは、公務員による犯罪行為ではないかと考えます。一方で考えられるのは、もしかすると、東京都は、日建設計が不適切な設計を行っていたことを、知らなかったのかもしれないということです。東京都が不適切な設計の事実を知らずに、建築確認の審査を行っていたのであれば、東京都内のすべてのSRC造について、審査の見落としがなかったか、調査をする必要があります。もし、東京都が不適切な設計の事実を知っていながら、建築確認審査で見逃していたのであれば、公務員として犯罪に値します。
日建設計については、さらに悪質です。PTに虚偽の説明資料を提出した日建設計の構造設計担当者と責任者は、【業務上過失】を犯したことになるのではないでしょうか。日建設計が会社としてではなく、構造設計担当者や責任者が独断で不適切な設計を行ったのであれば、日建設計は担当者たちを刑事告訴すべきではないでしょうか。そして、私たちの指摘を受け、日建設計を庇った東京都やPT委員でもある森高英夫(一社)日本建築構造技術者協会(JSCA)会長も、結果的に共犯ということになるのではないでしょうか。――大手の日建設計が犯した豊洲市場の建築基準法令違反から、専門家としてどのようなことが考えられるか。同社は、全国的に多くの公共建築物を手がけている。
仲盛 日建設計による、法令違反を含む不適切な設計は、日建設計が関与したすべての建築物におよんでいる可能性を否定できず、豊洲市場は『氷山の一角』に過ぎないと考えられます。日建設計が関与した全国の建築物に関する調査を早急に実施すべきです。
日建設計は、東京スカイツリーを始めとした、全国の主要な建築物の設計を手がけています。東京オリンピック・パラリンピックを2年後に控え、今後30年以内の首都直下型地震の発生確率が70%と警告されている状況を考えれば、日建設計が設計に関与した建築物の調査に時間の猶予はありません。「30年以内に70%の発生確率」というのは、「30年後」ではなく、今日、明日かもしれないのです。東京オリンピック・パラリンピック開催中に地震が発生し、日建設計が設計に関与した建築物において人的被害が発生した場合、国際的な問題にも発展しかねません。そのため、早急に調査を実施し、是正措置を講じる必要があるのです。
もし、調査の結果、不適切な設計が豊洲市場だけであったなら、それは意図的であり、犯罪に等しい行為であるといえます。このまま、相手方東京都と設計者である日建設計が事実を認めず隠ぺいを続けるのであれば、【未必の故意】といえます。
私たちが理解できないのは、本件建物の所有者・管理者である東京都が、なぜ、不適切な設計を行った日建設計を庇い続けるのか?ということです。一般常識として、マイホームを建てて不具合が判明すれば、業者に是正を求めたり、損害賠償を請求したりするはずです。個人が数千万円の買い物をしたのですから当然です。しかし、東京都は、日建設計を責めずに、逆に庇っています。これは、何か特別な関係がない限り、考えられないことです。
そして、この特別な関係が、都民にとっては、【税金の無駄】という大きなマイナスとなっていることも事実です。豊洲市場の設計料として、12億7,000万円も日建設計に支払われています。法令違反の設計に対し高額な設計料を税金から支出していることについては、市民オンブズマンなどから追及を受けると思われます。
同様の事例が、全国の建物に潜んでいると考えれば、日建設計は、先ず、本件において、非を認め、申立人や関係機関と検討したうえで対策を講じ、全国の日建設計関与物件の調査方針を示すべきです。そうしなければ、日建設計に対する不信感は、全国の建築業界に拡がり、深刻な問題に発展することは間違いありません。当然、全国の行政も巻き込まれることになります。
豊洲市場の法令違反を是正するためには、除却という方法が最善であると思われますが、時間を掛けて是正方法を検討すれば、除却以外の是正方法も見つかるかもしれません。しかし、仮に、除却以外の是正方法があったとしても、市場が移転した後では、市場が稼働しており、是正措置のために市場を停止させることが不可能なので、今、いったん、移転を止めて、是正方法を探るべきであると、建築技術者の立場から申し上げます。
(了)
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