猛暑で電気代への不満爆発(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
韓国も日本同様に、今年の夏は、とても暑かった。8月のソウルは気温35度を超える猛暑が続き、エアコンなしでは生活できない日が続いた。夜も気温が25度以上の熱帯夜が続き、「眠れない」と苦痛を訴える人が増えている。
このような猛暑の中、韓国で新たな論争が起こっている。現在の料金体系では、電気代が心配で、エアコンを思う存分使えないという論争だ。韓国の電気代は安いと思っている方にとっては、驚きだろうが、今年のように暑くても、韓国ではエアコンを安心して長時間使えないのだ。
今回は現在、韓国社会で声高に廃止が叫ばれている電気代の累進制(従量制)について取り上げてみる。韓国の電気料金は、世界的にみると比較的、安い方で、とくに、産業用電力は、日本と単純比較しても、半分以下だろう。韓国政府は産業育成のため、産業用電力を優遇した反面、家庭用電力については需要を抑制するため、電気代の累進制という制度を導入している。電気代の累進制とは、電気使用量が増えるにしたがって、電気代が高くなるという料金体系である。
韓国に電気代の累進制が導入されたのは、1974年のことだ。当時、韓国の電力供給は常に不足しがちだった。そこで需要が増え続ける産業分野の電力供給を円滑にするために、家庭の電気代に累進制が導入されるようになったのだ。
累進制導入は、国家経済の発展には何の貢献もしない家庭用電力の需要増加を抑えることが目的だった。しかし、電力需要の全体の構成をみると、この累進制はあまり意味をなさなくなってきたことがわかる。
韓国の電力需要の構成は、家庭用が13%、産業用が55%、商業用が22%~23%。このうち家庭用電力だけが電気代の累進制になっているが、家庭用が占める比率は小さく、専門家は家庭用の電力需要を抑える目的で、電気代の累進制を実施しても、効果が薄いと指摘している。もう1つの問題は、累進制の倍率である。累進制を導入している国には日本、中国、カナダ、豪州などがあるが、韓国の累進制は倍率が高すぎると指摘されているのだ。
累進制に対する不満は今回が初めてではなく、16年にも同様のことがあり、累進制が緩和された経緯がある。当時、韓国の電気代の累進制は、6段階に分かれており、使用量が6段階目になると、電気代が1段階目の11.7倍にまで膨れ上がるようになっていた。1段階(使用量100キロワット未満)では、1キロワットあたりの電気代は60.7ウォン(約6円)であるのに対して、6段階(使用量500キロワット以上)になると、電気代は709.5ウォン(約70円)に跳ね上がるわけだ。
この累進制を16年末に、3段階に減らし、倍率も3倍に縮小した。それでも日本や中国と比較すると、依然として累進倍率が高い。日本の累進制は3段階に分かれていて、電気代の倍率は1.3~1.6倍、中国も3段階に分かれているが、電気代の倍率は1.5倍となっている。
(つづく)
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