2024年11月29日( 金 )

猛暑で電気代への不満爆発(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 韓国の大統領府である青瓦台のホームページには連日、電気代の累進制は、時代遅れの制度であり、廃止すべきだという書き込みで溢れている。このような国民の不満を受けて、大統領も電気代の累進制の見直しを検討するようにと指示しているが、制度が廃止される気配はない。累進制は電気代が心配になる夏と冬だけ、限定的に適用しない案などが検討されているようだ。

 韓国では国民であれば誰でも平等に使えるはずの電力にも「エネルギー使用の二極化」が進んでいる。資産家は優遇され、低所得層はエアコンもろくにつけられず、我慢を強いられる状況に庶民の不満が噴出しているわけである。

 韓国の電力使用の状況は、統計にもよくあらわれている。韓国では家庭用電力の需要を抑えるため累進制を導入したことが功を奏しているのか、国民1人あたりの電力使用量は、OECD加盟国平均の半分くらいである。電気代の累進制が電力の使用を抑制していることは明白である。その反面、韓国全体の電力使用量は昨年534TWhで、世界7位である。韓国は国力に比べて、電力を使いすぎている状況だ。15年には電力使用量が世界9位だったが、16年には8位に、それから17年には7位になっている。韓国の電力使用が徐々に増えていることが見て取れる。

 韓国は、むしろ産業分野と商業分野の電気代に累進制などを導入して需要をコントロールする必要があるのではないだろうか。もちろん、電気代が上がると「産業競争力が落ちる」と反発する意見もあるかもしれないが、鉄鋼、半導体などの大手企業では、すでに電力使用について自社努力をしているので、それほど影響はないと思っている。

 現在はライフスタイルも様変わりし、パソコンなどを使っての在宅勤務も増えている。時代の変化に合わせて、思考のパラダイムシフトが必要な時期である。そのような意味でも、累進制の廃止、または見直しは検討に値するのではないだろうか。

 最後に、電力の供給サイドを見てみよう。今の韓国政府は脱原発政策を掲げている。この政策によって、韓国電力は、今まで主に原発から電力を購入していたのをLNGなどに切り替えることにより、原価が上昇し、経営が圧迫されている。原発の稼働率は80%を超えていたが、脱原発政策を打ち出したことによって、58%に落ちている。

 原発の電力購入価格は1キロワットあたり68.1ウォンであるのに対して、LNGになると、購入価格は126.2ウォンへと跳ね上がる。韓国電力は昨年の第4四半期につづき、今年の第2四半期まで連続して赤字を垂れ流している。今年の上半期の営業赤字は8,147億ウォンで、韓国電力の負債総額は約114兆ウォンにまで膨れ上がっている。このような状況下で、韓国電力が上記の累進制の廃止に踏み込むことは、容易ではないだろうが、韓国の電気料金が需要と供給、両面での制度見直しが求められているのはたしかだろう。

(了)

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