2024年12月23日( 月 )

【宮川選手パワハラ騒動】宮嶋泰子氏「炎上」に見る日本人の認識論理の稚拙さ

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

青沼隆郎の法律講座 第6回

 テレビ朝日の元アナウンサー宮嶋康子氏は宮川紗江選手の今回のパワハラ告発は「思い込みの強い」告発で、問題である旨の論文を発表した。ネットではすでに「露骨な協会と塚原千恵子氏擁護」との批判が散見されるため、本稿では「露骨」と表現された部分について、論理的分析を試みる。

「思い込み」という表現の不適切さ

 通常、「思い込み」とは「証拠」に基づかない、「勝手な空想」によるという意味であり、要するに「根拠のない」という意味である。宮嶋氏はその論拠に、宮川選手が記者会見で「~と思います」とか「~と感じました」という表現を多用したことを掲げた。

 「思う」とか「感じる」とかの用語は何も空想的主張のときのみに使用される言語ではなく、主張の一形態であり、「~である」と断言したり、「~と判断できる」と表現したりしたところで、それは主張の強弱か、表現上の「好み」の差しかない。問題は主張者の論理・レトリックであって、それを抜きに「思い込み」と断定するところが、まさに「思い込み」に他ならない。

 宮川選手と塚原夫妻の3人の会話は3人以外の第三者の認知できないかたちで進行した。もちろん、宮嶋氏もその具体的会話内容など知らない。にも拘わらず、この3人の会話-1対2の会話についての一方の当事者が会話から受けた直接の感想をそれこそ何の根拠もなく「思い込み」と断定できるのであろうか。もっとも宮川選手の判断にはそれ相当の根拠が述べられた。

 その論拠となる「理由」のどれ1つとしてコメントすることなく、宮嶋氏は「思い込みがつよい」と判断した。このようなコメントを平然と公共の電波を使って主張することの責任・重大性を宮嶋氏は自覚していないのであろう。その後、宮嶋氏の論文に多数の批判がネットで繰り広げられたが、宮嶋氏の適切な反論や説明はいまだない。「どちらが正しいか、証拠に基づいて判断したい」と「思い込みがつよい」と判断したこととも矛盾する「結語」が妙に空しかった。

 この宮嶋発言は日本人の認識論理の稚拙性が原因である。安倍首相が公然と公的記録と矛盾する発言(愛媛県の公文書記録事実と矛盾する発言)をしても、誰も首相が「嘘をついている」と発言できない、しない、日本の文明レベルの低さがその原因である。

 安倍首相はいう「嘘というならその証拠を示せ」と。野党の国会議員もジャーナリストも全員、この発言で黙らせられた。安倍首相は平然と矛盾の事実を主張するだけであるが、安倍首相の本当の責任は、愛媛県の公文書が虚偽であることを立証することであり、ただ、否定するだけでは、刑事犯人がただ犯罪を否定したり、黙秘したりするのと同じである。警察や検察の立証に対しては合理的な反論がない限り、犯罪は認定される。安倍首相も愛媛県の公文書が虚偽であることを立証する必要があった。

 そしてそこに登場したのが、さらに理不尽な加計学園事務長の独断虚偽説明という事実である。明らかな「あとづけ理由」であり、これは後世に残る噴飯事件である。件の事務長が学園を代表して(事務長は学長。学園の代理人として出席しており、事務長の個人的参加のただの世間話会ではない。代理人の発言は法的には本人の発言となる)虚偽発言をしたのであれば、そもそも加計学園の申請手続きには重大な瑕疵がある。大学の認可などあり得る筈もない。このような法的瑕疵にも野党の議員は何もできない。愛媛県では住民訴訟が提起されているが、これこそマスコミは真剣に報道すべきである。

 加計学園事務長の荒唐無稽な虚偽説明自白で、安倍総理の無実は証明されたといえるのか。事務長はなぜ、偽計業務妨害罪で検察に検挙されないのか。野党議員は本当に法的基本知識がないことを露呈してはいないか。

▼関連記事
・【宮川選手パワハラ騒動】「炎上」の宮嶋泰子氏、さらに墓穴を掘る!

<プロフィール>
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)

福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める。

関連記事