2024年11月29日( 金 )

アセアンのリーダー国を目指すインドネシアの強みと弱み:日本の出番!(後編)

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2018年9月21日付の記事を紹介する。


 去る5月、中国の李克強首相が来日したが、同首相は日本に来る前にはインドネシアを訪問していた。インドネシアにとって中国は最大の貿易通商相手国である。アジアにおけるアメリカの存在感が低下する中、中国の影響力は日に日に拡大している。インドネシアとしては最大の経済面でのパートナーである中国が今後10年以内にアメリカや日本を凌駕するものと踏んでいるようだ。

 インドネシアとすれば、自国の持つ地理的、戦略的価値を最大限、中国に売り込もうという魂胆であることは間違いない。インドネシアと中国は軍事面での連携も強化している。双方の軍事関係者による協議は定期化しており、装備品の共同開発や中国製兵器の導入も加速している。

 実は、インドネシアはアメリカとの通商交渉では日本以上に成果を上げているので驚かされる。トランプ大統領の下で、アメリカは世界を相手に関税、通商戦争を仕掛けている。日本に対しても鉄鋼やアルミを皮切りに自動車にも25%の追加関税を付与すると脅しをかけている。安倍首相始め、日本政府は何とか「同盟国なのだから、例外扱いにしてくれ」とワシントン詣でを繰り返すが、一向にラチがあかない。ところが、インドネシアは巧みな交渉でトランプ政権から「例外扱い」を勝ち取ったのである。

 インドネシアのルキタ貿易大臣曰く「アメリカのロス通商代表にアメリカでは製造していない鉄鋼品目であることを丁寧に説明し、納得を得た。34万トンの対米輸出を確保した。アメリカの貿易相手との緊密な連携が功を奏した」。逆にいえば、日本はアメリカ国内の産業界との連携プレーが十分に機能していないというわけだ。そうした対米交渉の腕前を見込んで、中国はインドネシアにトランプ政権との仲介役を依頼しようというのである。インドネシア政府は天然ガスに限らず、石油、魚類など海洋資源の宝庫と目されるナトゥナ諸島に関しても中国以外の外国企業に投資を呼び掛けている。

 意外なところでは、中国による一帯一路計画の対象にアメリカのトランプ大統領一家が進めるインドネシアのテーマパークが含まれていることだ。中国の国営企業によるトランプの名前を冠したゴルフ場やホテルの建設がジャカルタの郊外リドで進行中である。建設の主体はインドネシアのMNCランドであるが、トランプ大統領の2人の息子がリゾート事業に直接係っている。そこを見越して、中国政府が5億ドルの資金提供を行ったのである。インドネシアとアメリカの双方に恩を売る戦略といえそうだ。

 中国企業MCCによれば、「インドネシアにおける一帯一路計画の最初のプロジェクト」とのこと。さらにいえば、トランプ大統領のファミリービジネスに中国政府が直接影響力を行使しようとするもの。その成否を中国が左右するとなれば、トランプ大統領の対中政策にも何らかの配慮が加えられる可能性がある。

※続きは9月21日のメルマガ版「アセアンのリーダー国を目指すインドネシアの強みと弱み:日本の出番!(後編)」で。


著者:浜田和幸
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